安河内:本当は発音矯正などをやったほうが、そういう問題でも点数が取れるようになるのだけど、その結び付きをペーパーテストがわからなくしている。
単純に日本語を使わない4技能テストにしてしまえば、多くの問題が解決すると思います。あと、日本人というのはテストという目標を与えられると、それに対するソリューションを開発する天才的な能力を持った民族だと思いませんか。本屋さんに並んでいるソリューションの数たるや……。
テクノロジーを教育現場に活用!
斉藤:それは、僕はちょっと違った見方をしているのです。確かに講師の経験と勘に頼った分析というのはたくさんあるんですけど、今は塾業界の外に出たらビッグデータ分析の時代ですよ。ここまでコンピュータが発達した時代ですから、実際の英語とのギャップをどう埋めていくのかというコーチングに、そのテクノロジーや分析手法を教育現場は活用すべきだと思います。赤本を何年分見たからいい講師だという時代じゃない。もっともっとテクノロジーの導入と活用を、教育現場は真剣に考えるべきですね。そうして個別の生徒への診断や教材の提供というのが、もっと綿密に行える時代が来る。
安河内:ネットで、そのへんの個別対応ができるようにはなってきてますしね。個人のデータもいろいろ問題はありますけど、4技能のデータ化とか4技能の中でも細分化して、スピーキングのスキルの中でもロジカル・プレゼンテーションとかレスポンスとか、発音・イントネーションとか、そういうものの個人データが出てきて、それに対するプログラムも供給できるようになってきます。
斉藤:そこがこれからの傾向と対策になっていきますよ。大学ごとの傾向と対策をやりますという時代じゃなくなりますね。
安河内:今は大学の数だけ入試問題がありますが、これがいくつかのレベルに分かれた4技能試験に束ねられます。そして、それぞれの4技能試験も難易度は違いますが、試している力は、大して違わない。IELTS(International English Language Testing System)もTOEFL iBTもTEAPも試しているスキル自体は似ています。ストレートにスキルが試されるわけですから、生徒たちも傾向の分析のような余計はことをやらなくてよくなる。
斉藤:京都大学は和訳の問題があるんだよね?って、そんなのくだらないですよ。そういうくだらない話じゃなくて、英語の能力を本質的にどう計るかという議論に即した出題と取り組みを、現場もやらなくちゃ。
安河内:ご存じだと思いますが、多くの4技能試験というのは、項目応答理論というのを使って、きちんと受験者の実力が反映されるように、つねに自助努力をしてます。採点者のトレーニングや採点の基準設定も毎年進化しています。
それと、さらに大事なことは、これから、それぞれの4技能試験の間でも競争原理が働くことです。この日本という大きな大学入試の市場に参入したければ、いかに日本の学習指導要領に合わせられるかということも考えてやらないと、ただアメリカで作ったテストだからなんでもいいですよ、とはいかない。
斉藤:相互乗り入れしつつ、換算しつつ、生徒も自分の実力に合ったものを選んで受けられるという、まぁ、いい時代が来るわけですよね。
安河内:今ある試験を全部いっぺんに変えることは難しいでしょう。全部いっぺんに廃止して、いっぺんに変えたいという改革派もいますが、私はいろんな人と話をする中で、それは非常に難しいのかなと感じています。私が提案しているプランは、まずは外部試験を換算して入試に使えるようにしていくこと。
たとえばですよ、TOEFL iBTの点数が60点取れた人は、センター試験を受けなくても160点もらえるとか、70点取れた人は受けなくても満点もらえるとか。ほかの4技能試験でも換算できるようにする。
斉藤:段階的に導入しつつ、将来的にはセンター試験の英語は廃止するのですか?
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