今さら聞けない「ジョブ型雇用」と就活生への影響 日本はジョブ型雇用よりジョブ型採用が現実的か

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ではなぜ今、「ジョブ型雇用」が注目されているのだろうか。

理由はさまざま考えられるが、最も大きいのは「終身雇用」が失われつつあるという現状だ。メンバーシップ型雇用は、生涯一つの会社で勤め上げることが前提となり初めて、労使双方にとってメリットの大きい雇用形態手法だ。企業は将来的な回収を見込んで人材に投資できるし、労働者は安定した収入を担保に希望しない異動や転勤にも応じて会社に奉仕する。

しかし、現在は社会の変化が激しく、企業の多くは厳しいグローバル競争にさらされ、大企業であっても安泰ではない。そして競争に勝ち抜くために単に労働力を削減するのではなく、時代に応じた人材の確保や配置が必要になる。たとえば、自動車メーカーがEV化の進展で、電機メーカー出身のエンジニアの確保が続いている。今後そうした必要に応じて、専門的な人材の確保がどの企業や業界で当たり前になってくるだろう。

さらに、労働者の価値観も多様化し、ライフスタイルの変化にあわせた柔軟な働き方を考えるようになった。就活生の間では「ファーストキャリア(に選ぶ企業)」という言葉が使われ、転職によるキャリアアップを前提にしている傾向も見られる。

企業側も働く側も「新卒で就職したら定年まで」は、もはや当たり前ではなくなってきている。

こうした状況のなか、経団連は2018年に「Society5.0」の提言を発表し、そこで人事制度改革「ジョブ型雇用の導入」を盛り込んだ。労働者は、キャリア開発を組織任せにするのではなく、個人で責任をもち、スキル・能力を磨いていく必要があり、また、企業側はこうして磨かれたスキル・能力が活かせるような雇用形態を用意すべきだ、という議論に発展しているのである。

ジョブ型雇用の導入ハードルは高い

しかし、これほど話題になっているにもかかわらず、ジョブ型雇用の導入が進んでいないという現実もある。それはなぜなのだろうか。

理由として挙げられるのが、人事制度を根底から変更する必要があるという問題だ。ジョブ型雇用は採用時に「職務内容(ジョブディスクリプション)」を募集要項に提示すればよい、という単純な話ではない。

極端にいうと多くの日本企業で見られる「総合職」を廃止するような考え方だ。当然、配置・配属方法や評価制度をすべて見直す必要がある。また、多くの人が最初は「職務実績のない状態(=新卒)」で就職するわけだが、「職務実績のない人材」の資質や可能性に投資するような「ポテンシャル採用」もない。企業側には導入コストが大きく、働く側にとっても一定のリスクをともなう。

実際、経団連のメッセージを見ても、「ジョブ型雇用へ完全に移行せよ」ではなく、「メンバーシップ型を活かしながらジョブ型を最適に組み合わせた、『自社型』雇用システムをつくり上げていくことが大切」という表現をしている。

このような状況下で、新たに注目されているのが「ジョブ型採用」だ。導入が難しい「ジョブ型雇用」のうち「予め職務内容を限定し、提示する」という考え方を新卒採用という場面において活かしていこうとする考え方である。

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