アフガン撤退後の日米同盟に求められる重い役割 2030年代はインド太平洋が主要な戦略の舞台に

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2005年2月の日米安全保障協議委員会(2+2)では、こうした実績を基礎として「世界における共通の戦略目標」を確認し、日米同盟をグローバルに位置づけている。また翌年の日米首脳会議は「地球的規模の協力のための新しい日米同盟」が宣言され、テロとの闘いにおける勝利、シーレーン防護、人権の擁護等を日米共通の価値観として推進することをうたったのである。

「地政学の逆襲」と同盟の地域回帰

こうした時代背景は大きく転換した。中国の軍事的台頭、北朝鮮の核・ミサイル開発、ロシアの対外介入の積極化、イランをめぐる勢力均衡の展開など、「地政学の逆襲」(ウォルター・ラッセル・ミード)が安全保障の主要課題となったからである。アジアと欧州の双方で、領土・主権・海洋権益をめぐる競争が重要性を増し、武力行使に至らない範囲で現状変更を試みようとする「グレーゾーンの事態」が深刻化した。また、軍事と非軍事の境界を意図的に曖昧にして、非正規の部隊による作戦、サイバー攻撃、偽情報の流布などの影響力工作などを含めた「ハイブリッド戦」も展開されるようになった。

そしてアメリカと同盟国は「地政学の逆襲」に伴い、再び「対称型脅威」に向き合わなければならなくなった。特に中国の海空軍力の増強、弾道・巡航ミサイルの配備、核戦力の近代化は、米中の戦略的競争を熾烈にしている。中国の軍事的台頭により、アメリカの軍事面での優越がもはや当然視できず、将来の優位も保証できないという見方が広がったからである。

特に西太平洋に面する中国の周辺地域では、中国の接近阻止・領域拒否(A2/AD)能力が拡張し、アメリカ軍が戦力投射するコストを大幅に上昇させている。台湾や南シナ海などが含まれる「第一列島線」内の、有事におけるアメリカ軍の作戦行動は、中国の作戦航空機や海上戦力に徐々に優越性が脅かされ、また第一列島線を越えた広域でも、弾道・巡航ミサイルによる拒否能力に向き合わなければならなくなった。

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