ドイツの「コンテナ港」運営権を中国企業が買収 中国遠洋海運集団、港湾運営事業を欧州に拡大

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中国遠洋海運集団は、ハンブルグ港のコンテナターミナルを中欧貿易の貨物積み替え拠点として活用する計画だ(写真は中遠海運港口のプレスリリースより)

中国の国有海運最大手の中国遠洋海運集団(コスコ・グループ)は、海外での港湾運営事業をヨーロッパに拡大する。

同社の上場子会社でコンテナ港の運営を手がける中遠海運港口(コスコ・シッピング・ポーツ)が9月22日、ドイツのハンブルグ港にあるトレロー・コンテナターミナル(CTT)の運営権の35%を6500万ユーロ(約83億2000万円)で買い取ると発表した。CTTの運営会社は現在、ドイツの港湾運営・物流サービス大手であるHHLAの傘下にある。

中遠海運港口は同時に、HHLAがCTTの運営会社に対して貸し付けている資金の返済および利息支払いの35%も肩代わりする。その結果、同社の投資総額は9900万ユーロ(約126億6800万円)に達する見込みだ。

この買収の完了後、中国遠洋海運集団はCTTをヨーロッパにおけるコンテナ積み替えの中枢として活用する計画だ。業界関係者の見立てによれば、HHLA が運営権の一部売却に応じた背景には、中国遠洋海運集団のコンテナ船団がもたらす取扱量の増大と安定した雇用機会への期待がある。

取引完了にはドイツ当局の認可が必要

ハンブルク港は貨物取扱量がドイツ最大、コンテナ取扱量がヨーロッパ第3位の大型港だ。2020年のコンテナ取扱量は世界18位の850万TEU(20フィートコンテナ換算)に上り、その3分の1を中欧貿易の貨物が占めている。ハンブルグは、中国とヨーロッパを結ぶ国際定期貨物列車「中欧班列」のターミナル駅の1つでもある。

HHLAはハンブルク港でCTTを含む3つのコンテナ埠頭を運営している。CTTは4つのバースと14機のコンテナ用クレーンを擁し、積載量2万TEUクラスの超大型コンテナ船の接岸にも対応できる。

本記事は「財新」の提供記事です

CTTの運営権取得をめぐっては、中遠海運港口は2021年6月初旬の段階でHHLAと交渉中であることを明かしていた。なお、今回の取引を完了させるためには、独占禁止法当局の審査やドイツ連邦経済エネルギー省による認可など複数の条件をクリアする必要がある。

(財新記者:賈天瓊、楊迪)
※原文の配信は9月22日

財新 Biz&Tech

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