経営者が会社で「邪魔者扱い」されないための秘訣 「ライフ・シフト2」が問う「企業の価値とは何か」

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オフィスはもう必要ないのではないか。これは社内でもかなり議論しました。でも僕はオフィスの需要がなくなったとは思いません。

かつては、管理職が従業員をマネジメントしたり、活性化させて生産性を高めたりするために最も効率的なのが、決まった時間に従業員をオフィスに集めることでした。 だけど今は、個々の事情があるにせよ、在宅ワーク環境を整えることができれば、 在宅で仕事をしていたほうが 集中力が高まるという研究結果もあります。

セレンディピティの場としてのオフィス

どんなにコストをかけてオフィスの環境を整えたとしても、家で働いていたほうが集中力が高まるのなら、オフィスの価値っていったい何なのか。僕は、オフィスは中央集権的に従業員を管理するための場ではなく、むしろ従業員同士が集って、出会って、信頼関係を深める場所と定義しています。

コロナ禍のリモートワークで最も失われてしまったのは、「セレンディピティ」でしょう。偶然の出会いや、従業員同士の想定されていないディスカッションから生まれるイノベーションが急激に減ってきています。

「そういえばアレどうなった?」「なんか顔色が悪いけど、どうした?」といった、ミーティングの5分前に皆が集まって始まる何気ない会話が、じつは非常に重要です。そこから信頼関係が醸成されたり、話が意外な展開に進んだりすることがあるんです。

ですがオンラインだと、アジェンダが決まっていて、フリーディスカッションがないままにミーティングが始まり、終わります。業務効率が劇的に上がる一方、偶発性のあるイノベーションが生まれにくくなっています。だからリアルのオフィスは、そういう部分を補填する場所だと思っているんです。

僕らの会社では、遠方に住む社員に対して、東京のオフィスに来るための費用を出しています。マネージャーだと1カ月に1回、一般社員は2カ月に1回、宿泊費込みで4万円。たいしてリッチな会社でもないのですが (笑)。「無形資産」を醸成するために投資をしているんです。

●歳をとっても人は学べる

『ライフ・シフト2』で印象的だったのは、年齢を重ねたら学ぶことができなくなる、という思い込みを否定している点です。

老いると頭が凝り固まって、新しい知識を得ることができないのではないかと恐れる人は少なくないですが、人間の頭脳は可塑性が備わっていて、筋肉と同じように適切に訓練をすれば能力を取り戻すことができる。

「年齢を重ねた人が新しいことを学べないとすれば、それはその人が老いているからではなく、新しいことを学び続けてこなかったからである」。こう喝破している点は、非常に共感しました。

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