日本人の「読解力」が劇的に落ちている確たる証拠 情報の摂取量が多くても思考が偏る仕組み

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また、新型コロナ患者はインフルエンザ患者よりも、人工呼吸器などによる呼吸管理が必要になるケースが約4倍、集中治療室に入るリスクも2.4倍という数字が出ています。

同時期でのフランス医学保健研究所の研究発表によると、新型コロナ患者の入院数の最多記録は、2018〜2019年のインフルエンザ患者数のピークの2倍以上であり、致死率は約3倍に達したというデータが示されています。

この他にもおそらくいくつかの有効なデータが示されていると思いますが、いずれにしても、新型コロナはインフルエンザに比べ致死率が明らかに高い。コロナ陰謀論者がしきりに主張する、「コロナは虚構だ」とか「風邪と同じ」というのが、科学的な根拠のない、強引な主張だということがわかるでしょう。これらのデータや調査結果を認識した上で、新型コロナのリスクを自分なりに冷静に受け止め、対処することが必要です。

ところが不安を煽るメディアの報道を信じて、過度に神経質になる人がいます。一方、エビデンスにも基づいていない「コロナ陰謀論」にハマってしまう人も少なくありません。

客観的な情報に触れたとしても、それを自己流に都合のいいように編集してしまう。テキストの中から自分にとって有益、有効なものを拾い上げ、それ以外はノイズとして捨ててしまう。そういう作業を行っている人が、残念ながら増えているように感じます。

簡単な文章さえ理解できない学生

少し前に、国立情報学研究所教授で、人工知能プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」のプロジェクトディレクタを務める新井紀子さんが、『AI vs.教科書が読めない子どもたち』(東洋経済新報社)という本を書いて話題になりました。

『読解力の強化書』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトへジャンプします)

新井さんは自ら作った基礎的読解力調査テスト(RST)を全国の中高生を対象に行い、いまの中学生の読解力が低下していることに衝撃を受けます。簡単な文章でさえ、正確にその意を汲み取ることができない学生が予想以上に多かったのです。

最近の中高生の語彙の貧困を嘆く人もいるかもしれません。しかし、自分の都合のいいように文章を編集し、勝手に解釈するという点では、実のところ多くの大人たちも、語彙の貧困な中高生と同じ作業をしている可能性があるのです。

佐藤 優 作家・元外務省主任分析官

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さとう まさる / Masaru Sato

1960年、東京都生まれ。同志社大学大学院神学研究科修了。

2005年に発表した『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』(新潮社)で第59回毎日出版文化賞特別賞受賞。2006年に『自壊する帝国』(新潮社)で第5回新潮ドキュメント賞、第38回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。『読書の技法』(東洋経済新報社)、『獄中記』(岩波現代文庫)、『人に強くなる極意』(青春新書インテリジェンス)、『いま生きる「資本論」』(新潮社)、『宗教改革の物語』(角川書店)など多数の著書がある。

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