ちなみに、フランスでは1年に5週間の有給休暇とは別に、RTT(La Réduction du Temps de Travail : 労働時間短縮)と呼ばれる代休システムがあります。
法定労働時間で定められた週35時間労働を超えて働いた場合、(※「週35時間」とは、それ以上働くと割り増し賃金が発生するという意味の標準時間です。「それ以上の労働を禁止する」上限時間は週48時間に定められています)その超過分として、年間3週間を代休に充てられるのです。
実際、多くの企業は週39時間で運営されているため、その超過分をまとめて代休として社員に取らせることで、時間調整をしているそう。このため、5週間の有給休暇と合わせて実質8週間の年次有給休暇を謳歌しているフランス人が多いのです。
さすがにいっぺんに8週間の休暇を取る人はあまりいませんが、2週間の連続休暇は奨励されているそうで、その長期の休みに入るのに、いつから休暇を取るか、同僚たちに告げずにヴァカンスに出てしまう人もいるそうです。
長期間いなくなることでその前にやっておいてほしい仕事を振られるのを避けたいという思惑が透けて見えますが、困るのはその人の尻拭いをさせられる同僚たち。こういった社内の働かない人へのストレスは相当なものだという、前述した友人の言葉にはもっともだと思いました。
“だいたい休暇中”
「怠惰で、週に35時間しか働かず、だいたい休暇中、あるいはストライキ中で、それでもなお、何か不満の種を探している」――。
先日目にしたフランスのウェブサイト記事の文言に思わず笑ってしまいました。というのは、外国人から見たフランス人の仕事に対する姿勢の固定観念は、だいたいネガティブなものだという記事だったのですが、このイメージは紛れもなく、私自身が抱いていたものでした。
今でもこのイメージは間違ってはいないと思うのですが、フランスはOECD加盟国のうち労働1時間当たりの労働生産性は6位となっています。
フランスには基本的に2種類の雇用形態があります。労働人口の8割以上が「ノン・カードル」と呼ばれる非管理職に属し、それ以外が「カードル」、管理職です。
一度ノン・カードルで採用されると、勤続年数を重ねてもカードルになることはほとんどありません。逆に、新卒の若者でもカードルで採用されれば年上社員の上司になりえます。
給与の差は歴然で、両者とも規定の労働時間は週35時間ですが、一般的にカードルが残業代ナシの、成果主義の労働契約を結ぶのに対し、ノン・カードルは残業すれば残業代が出るか、休暇を取れることになっています。
社内でいくら頑張っても昇給や昇級が限られるノン・カードルにとって、仕事は生活やヴァカンスのためと割り切る人が少なくなく、残業代が出るからといっても時間以上は働かなかったり、責任感が足りなかったりする傾向もあるのでしょう。
一方、カードルは実績が即ステップアップにつながります。社内での昇級や昇給のスピードはノン・カードルよりずっと速いうえに、実績により格の上がった肩書を持って転職したほうがさらに待遇がよくなるので、日本のようにひとつの会社に一生を捧げるような土壌はありません。
両者のこうした特徴が仕事とプライベートをはっきり分け、仕事はあくまで人生の一側面とするフランスの風潮を育んでいるように思えます。
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