ON、OFFを明確に切り替えて、仕事とプライベートを両立させることが、労働生産性の向上に寄与している面はあると思います。
多い人で年に8週間ある有給休暇は、2カ月にも及ぶ長い夏休みに加えて、およそ2週間ずつ、年に4回ある子どもの学校の休暇にも合わせやすく、子育てとの両立を容易にします。子どもがらみの緊急の用事はもちろん、個人的な用事があったら仕事のスケジュールを調整できる融通の利きやすさが自由業に限られないのもフランスならでは。
休みが多いことで健康状態を良好に維持し、生活の質が改善されるのはいうまでもありませんが、ある程度まとまった休暇を取ることで、体調を整えるだけでなく、やる気やモチベーションも取り戻せる、といった声をよく聞きます。こうした自由度の高さや休暇の多さは、長い目で見れば仕事の効率化につながるのではないでしょうか。
会社への帰属意識の薄さ、自分の仕事をこなしていれば社内の目を気にしなくていい個人主義でドライな面など、日本とは国民性も風土もかけ離れていますが、それでも近年、フランスで問題になっていることは日本のそれと共通したものがあります。
カードルの人たちに増えている、鬱といった心の病がそれです。カードルは前述したように、ノン・カードルと同様、規定労働時間は週35時間ですが、成果主義の労働契約を結ぶという性質上、裁量労働制で働く人の割合が増え、長時間労働になる傾向にあるそうです。
頭は休まっていないことも
プライベートを優先させる風潮がフランス社会全体にあるので、社内だけでなく、取引先ともお互いの私生活を尊重し合う風土はあるものの、特に責任感の強い人などは休暇を取ってはいても、頭は休まっていないことがほとんどなのだそう。
そういったカードルの人たちに、休暇中の過ごし方を尋ねて驚いたことがあります。休暇明けに頭の働きが鈍くなるのを恐れて、完全に自分のスイッチを切らずに、難解な哲学書を読んだり、1人チェス(例えば家族でのヴァカンス中、対戦相手に自分のレベルに見合う人がいないと、自分で二役こなすそう)をするのだとか。
このエピソードに近いものは日本でも見聞きするのですが、仕事ができる人に共通した点かもしれません。
実際、こうした日常の結果、鬱に傾きがちなカードルの人たちを対象にしたカウンセリングも盛んで、また対処法を説いた本も多数あり、週末から月曜日の朝まで、仕事用の携帯の電源を完全に切ることや、家族や友人との食卓に仕事の会話を持ち込まないこと、または1日30分のウォーキングなどが推奨されています。
心と頭の本当の休息を取ること――。まったく異なるフランスと日本の働き方、休み方ですが、休息の本質だけは世界共通なのだと改めて思いました。
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