「ハコヅメ」に学ぶ新人が辞めない職場の超理想形 永野芽郁演じる新米が自律自走していった訳

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いつものらりくらりしていて、とにかく楽に仕事をすることを第⼀優先に考えているふう。自分からサボりのプロを自称するほどのゆるいキャラ。川合からすると、藤が口うるさい母親で、伊賀崎は優しいおじいちゃんのように見えているはず。

本来の役割設定でいけば、藤が姉で伊賀崎が父親といったポジションが妥当なはずですが、藤の存在感が大きいこともあり、伊賀崎はより温厚なキャラを意識的に演じているフシがあります。伊賀崎のこうしたキャラ設定によって、直属の上司=藤、上司の上司=伊賀崎という構図ができあがっていくのです。

直属上司よりもさらに上位の上司としての存在。本ドラマでの伊賀崎の立ち位置はそこです。どうしても近視眼的になりがちな直属上司の視点に比べ、達観した視点から、藤と川合ペアを見守る。ともいえるでしょう。

第6話で赤ん坊の交通事故死現場に遭遇した川合は深く沈み込みます。すると普段は上から目線の発言を一切しない伊賀崎が、「川合君、今日はもう切り上げなさい。これは上司命令だから」と通告します。業務遂行をあえて放棄させる。これも、ある意味で達観した視点のなせるワザです。

ナナメの間柄も生きる

さらにフォーカスを引いてみましょう。町山交番はその上位組織にあたる町山警察署と連携しながら事件解決にあたっていくのですが、この町山警察署の刑事課メンバーとの交流も描かれます。ここにも重要なポイントが見えてきます。

刑事課のメンバーは、捜査一係の刑事・源誠二(三浦翔平)と同僚の刑事・山田武志(山田裕貴)のペア。源は藤とは警察学校時代の同期で、藤とは頻繁にけんかするものの、実は、誰よりも藤のことをフォローしながら支える存在です。山田は藤と源の一期後輩で、藤と源のいざこざをつねに仲裁し、先輩2人にとっての潤滑油的な存在です。

仕事上の連携だけでなく、藤との関係性がベースにあることで、刑事課の源、山田と川合との接点もおのずと増えていきます。こうした「ナナメの関係性」は、最近とくに重要視されるようになってきました。メンターという存在を置いて、若手の話を聞き客観的な立場からアドバイスを送る企業も増えています。直属の上司、そしてその上司というタテの関係ではないことで利害関係が生まれにくいので、素直にコミュニケーションがとれるのが最大の利点とされます。

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