「ハコヅメ」に学ぶ新人が辞めない職場の超理想形 永野芽郁演じる新米が自律自走していった訳

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警察学校を主席で卒業した優秀な警察官で、刑事課のエースだった藤は、サバサバしていて思ったことはハッキリ言うキャラ。パワハラが原因で交番に飛ばされてきたという設定からも、かなりマッチョな性格であることが伺えます。

藤の川合に対する言葉には、か弱い新人への忖度はありません。そんなハードマネジメントに対して、なぜ典型的なイマドキの若者キャラである川合はついていくことができたのでしょうか。それは藤の発する言葉に、フィードバックのエッセンスが凝縮されているからです。

フィードバックとは、そもそも制御工学で使われている用語。出力結果を入力側に戻し、出力値が目標値に一致するように調整することを指しますが、ここから転じ、部下の仕事の進捗を確認しつつ軌道修正していくことに使われるようになりました。

フィードバックは、当然、部下の成長を促すことにもなりますが、聞き手に耳の痛いことを伝えるネガティブなアウトプットがどうしても多くなります。「直接的に言うと傷ついちゃうかなぁ。でも遠回しに言っても伝わらないしなぁ……」といった悩みを抱える管理職は少なくありません。

藤は、川合に対して躊躇なく厳しく接します。しかし、ただ厳しいだけではありません。本来のフィードバックは、その根底にあるべき“心配と信頼”をベースにさまざまな言葉で語りかけることが求められます。「ホッとしたり、ヒヤっとしたりを繰り返しながら警察官になっていけばいいよ」という藤の言葉からも、川合を見守る温かいまなざしが伝わってきます。このスタンスが宿っているからこそ、厳しい言動も心に響く。これがフィードバックの理想形です。川合は、藤の率直でいてハートフルなフィードバックによって開花していきます。

上司の上司、ハコチョーの達観

藤と川合のペアを中心にドラマは進んでいくわけですが、そのフォーカスをもう少し引いてみると、そのほかの登場人物も重要な役割を果たしていることがわかってきます。

その筆頭が、ムロツヨシ演じる町山交番所長の伊賀崎秀一。藤と川合の直属の上司で、部下からは「ハコチョー」と呼ばれています。直属の上司といえば、企業組織で考えると自分の査定をつける存在。たとえ良好な関係であったとしても、話すとなればそれなりに顔色をうかがうし、気もつかいます。しかし伊賀崎からは、そのポジションから想起される緊張感というものがまったく漂ってきません。

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