米国株の下落は長引かないと明確に言える理由 「岸田政権樹立」だけでは日本株上昇は限定的?

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また、経済低迷が起きていた1990年代には、長きにわたって政権を保った自民党の権力基盤が揺らいでいた。政治主導で経済正常化をもたらす政策は実現せず、責任回避と権力維持に走りがちな経済官僚による緊縮的なマクロ安定化政策が続き、当事者能力をほぼ失っていた経済官僚と銀行経営者による不良債権処理の先送りが続いた。これが、日本の経験した失敗である。

中国で行われている経済成長の牽引役である民間企業の経済活動を広範囲に抑制する最近の対応は、2010年ころまでの高い経済成長を目指した当局の政策運営姿勢が大きく変わったと位置付けられ、多くの市場参加者の共通認識になりつつあるだろう。

政策転換によって中国の経済成長が減速する状況を踏まえると、かつての日本の経験を元にすれば、中国の不良債権問題が深刻化するリスクは無視できない。ただ、日本で起きた不良債権問題には、当時の政治家そして官僚組織が当事者能力を失ったことで、経済政策運営が長年にわたり迷走したという政治的な要因が大きかった。

中国当局が金融危機を招く可能性はあるのか

一方、中国の政治情勢に筆者は詳しくないが、これまでの権力闘争を経て習近平主席に対する権力集約が進んでいるように見える。また、アメリカの当局と同様に、バブル崩壊後の日本の経済政策の失敗から権力集約を支えている中国当局は冷静に学んでいるのではないかと筆者は想像している。これらを踏まえると、かつての日本同様に、歴史的なバブル崩壊と金融危機を招く、政治的な失敗を現在の中国政府が犯す可能性は高くないのではないか。

もちろん、現政権が進める経済抑制政策が、中国の政治体制を徐々に揺るがし、政治統治が機能不全に至る、というシナリオも考えられる。このシナリオは長期的には十分想定できるが、今後1、2年の世界の株式市場に影響する可能性は低いと思われる。

中国への懸念はいったん落ち着いたが、28日にアメリカ株市場は再び急落した。同国の長期金利上昇が株安をもたらしたとみられ、FRB(連邦準備制度理事会)による引き締め政策への警戒感が株式市場を動揺させていると言われている。

9月21~22日のFOMC(連邦公開市場委員会)で、次回11月の会合でのテーパリング(資産買入縮小)を開始して22年半ばころまでに終わらせ、そしてテーパリングと利上げ開始を分けて考える方針がジェローム・パウエル議長から改めて示された。

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