米国株の下落は長引かないと明確に言える理由 「岸田政権樹立」だけでは日本株上昇は限定的?
そしてFOMCメンバーによる政策金利想定は、前回6月よりも想定する利上げ回数が増えたので、シンプルにみればFRBはよりタカ派化したとの評価になる。ただ、この利上げ想定の変化は、過去数カ月のインフレ率の上昇を受けて、一部のメンバーの見解が後追い的に変わったにすぎないだろう。
実際には、パウエル議長、ラエル・ブレイナード理事を中心としたハト派メンバーは一定の勢力を保ち、そして2023年以降に緩やかな利上げを行う、という彼らの想定は従来からほとんど変わっていないとみられる。今回のFOMCにおいては、FRBのタカ派化が示されたというよりも、メンバーの利上げペースの見解の相違が大きいことが確認された意味合いが大きい、と筆者は評価している。
春先からアメリカで起きていたインフレ率の大幅上昇の持続性をどう見るか、つまりタカ派は「高インフレの持続」を警戒し、一方パウエル議長らのハト派は「インフレは一時的」とみなす、が主たる意見の相違である。この相違はインフレの趨勢が定まる22年半ばまでは解消されないだろうが、問題はどちらのインフレ予想が妥当であるかである。
「岸田新政権」の政策が来年の日本株動向を大きく左右
足元で長期金利は上昇しているが、債券市場を中心に、「インフレは一時的」というハト派側の想定どおりに、経済・インフレが動くとの見方は変わらないだろう。10年国債利回りは、現在1.5%台まで上昇したが、従前までは長期的な経済成長率の低下をいったん織り込んでいたのでその反動で上昇しているのだ、判断している。
また、インフレ率の上振れが一時的との債券市場やパウエル議長らの見方に、筆者は総じて同意している。このため、FRBのタカ派化が、アメリカ株の大きなリスクになる可能性は低く、アメリカを中心とした世界的な株高を当面支えると見込まれる。
ところで、菅義偉首相の事実上の辞任表明以降、大幅高となった日本株市場(TOPIX・東証株価指数)は、9月20日以降は上昇が一服した。9月初旬の大幅上昇で、年初来リターンでみると日本株はアメリカ株(S&P500)にかなり追いついた。
ただ、自民党中心の政権が続く見通しが強まり、政治的な不確実性が低下するだけでは、日本株のリターンがアメリカ株を上回ることは難しいのだろう。
29日に開票された自民党総裁選挙においては、大方の事前の予想どおりに岸田文雄氏が選出され、10月からは岸田政権が発足することになった。仮に河野政権であったならば安倍・菅政権時の経済政策運営が大きく変わる可能性が高かったので、政策の継続性が総じて保たれるので、投資家の視点では安心できる結果である。
岸田政権が、安倍・菅政権を上回る成長重視の経済政策に踏み出すかは、今後の閣僚人事などからある程度は判断できる。拡張的な財政政策を提唱した高市早苗前総務相は、今回総裁選挙で存在感を示し、次期リーダー候補に躍り出た。岸田政権が、高市氏の唱える経済政策を積極的に採用するならば、202年には日本株のリターンがアメリカ株を2017年以来5年ぶりに上回る展開に期待できるだろう。
(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)
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