薄氷の中国恒大集団、政府、個人にも影響が大きい マネックス証券専門役員の大槻奈那氏に聞く

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政府は「共同富裕」という格差是正方針を掲げており、不動産でぼろ儲けした人を救うつもりはない。不動産会社の国有化はせず、金融機関が危なくなったら、金融機関に公的資金を入れる形だ。理財商品も保護しないという姿勢が明確だ。

――日本のバブル崩壊でも個人が損失を被りました。

「共同富裕」の筋を通すとしたら、10%を超える利回りにグッチのバッグや空気清浄機をつけるなど、ぼろ儲けをうたった投資で損をするのも仕方ないという考え方だろう。

その意味で、23日を通過したあと、株価が回復し中国恒大集団の株価も一時30%も上がってしまったのは気になる。創業家は7割の株式を保有しているので、また儲けた形になってしまう。

国内不動産市場の舵取りはナローパス

政府は、市場や投資家の動揺を抑えようと、27日、「健全な不動産市場を守る」と表明した。とはいえ、何事もなかったように金融市場が反応すると、また不動産価格も上昇してしまう。不動産価格の上昇を抑制したい政府としては困った話だ。

そもそも、中国では不動産需要が強く、4割の人が2戸以上の住宅を持っているとも言われる 。購入規制を免れるために偽装離婚するぐらい。そういうことを考えると、中国恒大集団は見せしめ的に潰して、不動産価格も冷やしたい。しかし、暴落は避けたい。不動産価格を上げも下げもしたくないというのは非常にナローパスだ。

――投げ売りが発生することの不動産市場への影響は?

もともと中国では大幅な値引きが横行しており、売れそうにないと大規模物件でも破壊してしまうことも行われている。今年に入り、毎日1社不動産会社が潰れているともいわれ、それ自体は日本で思うほどのインパクトにならないかもしれない。

ただ、理財商品の投資家が7万人以上いて、これらの人々に不動産の代物弁済で対応しているとなると、物件数で1万単位になる。これを7割引きといった価格にするなら影響はさすがに大きくなりそうだ。また、3つのレッドラインを満たしている不動産会社はS&Pの試算だと全体の6.3%にすぎない。他の会社も投げ売りをすることが懸念される。

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