このシリーズは、アメリカ人のイラストレーターと組んで制作したもの。題材は現代のポップカルチャーだが、江戸時代からあった「見立て」という手法が用いられている。見立てとは、ある題材からほかのものを連想させること。
例えば風景画があったとする。知らない人からすると、それ以上でも以下でもないが、実は歌舞伎や文学の一場面を表している……というふうに、絵の背景には作者の真の意図があり、気づいた人だけが理解できるのだ。
「江戸時代、浮世絵の多くは、ただの絵として人気があったわけじゃありません。絵の題材になっているもののルーツや歴史、人物画であればキャラクターを知っているから、人々は欲しがったんです。浮世絵ヒーローズもそう。多くの人が、テレビや漫画で見たことを思い出して、欲しいって思うでしょう? そういう意味では、江戸時代も今もまったく同じなんですね」
浮世絵ヒーローズで、経営も立て直せた
浮世絵ヒーローズは、窮地に陥っていたデイブさんの工房も救った。浅草に工房を開いたのは、同シリーズを発表する前年の2011年。木版画職人として活動してきたデイブさんが、還暦を迎えたのを機に、自分の技術や知識を若い世代に伝え、より木版画の魅力を広める拠点として設立したのだ。
4人の見習いを雇ったが、いきなり売り物をつくれるレベルでは当然ない。販売する版画もなく、固定費だけが出ていく状態で、デイブさんが貯金を切り崩して工房を支えていた。そして、あと2カ月で貯金が尽きるというときに、浮世絵ヒーローズが大ヒットし、経営を立て直せたのだ。
同時に、日本が誇るポップカルチャーと共に、木版画の魅力を世界中に広めることもできたのだと、デイブさんは笑顔で振り返る。
「アニメも漫画もゲームもそう、浮世絵、富士山、芸者、桜、日本酒、和食……日本のカルチャーは海外ですごい人気でしょ? 僕みたいな外国人もその宣伝をしているんですよ。クールジャパンの助成金は1円ももらっていないですけど(笑)」
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