浮世絵にハマったカナダ人が日本で見つけた使命 「木版画✕ポップカルチャー」を世界へ

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デービッドさんの木版画(撮影:今井康一)

厳しくダメ出ししてくれる存在も必要だと考え、作業中はもう1人の自分がつねに背後にいると想像した。デイブさんが細かいミスをして、「まぁ、これくらい大丈夫か……」と彫り進めると、分身は「見たよ、失敗したのに何でそのままにするの! そんな甘い考えだったら工房から出ていきなさい!」と、容赦なく叱責してくるのだ。そのようにして、デイブさんは職人としての技術も意識も高めていき、数年後には木版画家として独立するまでになった。

初の大作、百人一首の木版画が飛躍のきっかけに

さらなる飛躍のきっかけとなったのは、デイブさんにとって最初の大作となる、百人一首の木版画をつくったこと。もともとは練習目的で題材に選んだが、周囲の人々に見せたところ、「売ってほしい!」という声が相次いだ。そこで1989年から、1年に10枚、10年間かけて百人一首の版画を完成させたのだった。この取り組みはメディアからも注目され、木版画家としてのデイブさんの名前や技術を一気に知らしめた。

だが、もどかしさもあった。注目されればされるほど、「外国人なのになぜ日本の伝統工芸を?」という見方をされるようになったのだ。それに対して、デイブさんの考えは実にシンプルである。

「音楽の世界では、どの国でもどの街でも、モーツァルトを演奏していますよね。伝統的な音楽だから? 違う、モーツァルトの音楽が好きで、演奏すると楽しいからでしょう? 僕も同じで、浮世絵が好きなのだから、版画をつくってもいいじゃない。国籍も人種も目の色も関係ありません」

日本の伝統を守ってくれてありがとう、と感謝されることもあるが、「守る」という考えにも違和感を覚えるという。伝統であっても、時代と共に変わるのは自然なこと。昔のスタイルにこだわるあまり、変化を拒んでいると、新しいものが生まれないばかりか、伝統そのものが衰退してしまうおそれがあるからだ。

そんなデイブさんの信念を表すような版画作品がある。2012年に発表し、世界中で話題になった「浮世絵ヒーローズ」だ。日本のポップカルチャーが好きな人なら、見た瞬間に大興奮するのではないか。実際、浮世絵ヒーローズは世界中の人々をはじめ、美術館や博物館からも注文が殺到したという。

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