「社会守る」精神病院で人権侵害が続発する大矛盾 日本は認知症の強制入院を是とする国でいいのか

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今年7月末に放映された、NHKのETV特集「ドキュメント精神科病院×新型コロナ」番組内で、山崎会長の下記のようなコメントが紹介された。

社会秩序の担保と保安を担う精神科病院

「精神科医療っていうのは、僕はよく話をするんですけど、医療を提供しているだけじゃなくて社会の秩序を担保しているんですよ」

「町で暴れている人とか、そういう人を全部ちゃんと引き受けているので、医療と社会秩序を両方、精神科医療に任せてこの(診療報酬)点数なんですか?って言っているわけ」

「一般医療は医療するだけじゃないですか。こっちは保安までも全部やっているわけでしょう。精神科医療って。(入院を)断っていたらどこもとらないし、いちばん困るのは警察だと思うよ。警察と保健所が困るだけだよね」

日精協・山崎學会長の著書の目次の一部。「都立松沢病院解体論」「地域移行で幸せになれるのか」「社会的偏見を助長するのは誰か」など刺激的項目が並ぶ(記者撮影)

番組内での紹介がやや断片的だったこともあり、精神科病院が医療だけではなく社会秩序の担保と保安を担っているという、この発言の真意についても山崎会長に聞いた。

「(NHKの番組で)言っていること自体は、僕は間違っていると思ってないんです。精神科は今どうにかしてほしいという患者を家族や警察や保健所が連れてきて、精神保健福祉法に基づいて強制入院させるシステムです。たとえば心筋梗塞などで運ばれる患者とは違って、医療の提供の前に暴れている人をどうにかしなければなりませんが、そこに診療報酬上の評価が全然ないことを問題視しているんです。それが社会秩序の担保と保安機能を担っていることへの評価を、ということです」

「ただ精神科医療のこうした面(社会秩序の担保と保安)は、本来、政策医療として公的病院が担うべき話なのですが、それができないので民間病院にすべて丸投げされています。それはわれわれの仕事ではありません、と割り切るべきかもしれませんが、結局国はやらないし、現場が困っていると思えば、まじめな先生ほどやってしまうんです」

国が進める、長期入院患者の地域移行に関しても、山崎会長は一家言持つ。

「地域に出るということが、その患者さんにとって幸せだと思う? 僕は患者さんにとって余計なお世話だと思う。精神科病院で気の合った仲間とおしゃべりして一緒に晩ご飯を食べる生活と、独居のアパートでコンビニの冷たい晩飯を1人でテレビ見ながら食べる生活とどっちが幸せだと思う? しかも長期入院で社会生活の仕方もほとんどわからない人が地域に出て困惑するより、病院内の仲間と冗談言って、晩飯食べて、おやすみと寝て、病院に長期入院でいるほうが、僕は幸せな気がするけどな。僕ならそっちのほうがいいな」

こうした山崎会長ら日精協側の主張に対しては、当事者団体から反発の声が上がる。

「精神科医療の利用者を『町で暴れている人』と視聴者に同定させることで、精神障害者を危険視し、保安の対象であるとみなす偏見をあおる」

「精神科病院が保安のための収容施設と自認することで、現状の強制医療および劣悪な療養環境を居直ることは、精神障害者に対する人権侵害を助長するものだ」

先の神出病院の患者虐待事件を追及している、兵庫県精神医療人権センターは山崎会長の発言に対しても、上記の趣旨の抗議と申し入れを行っている。

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