SDGsの根幹「人権」に日本の意識が低すぎる大問題 経産省と外務省がデューデリ状況をやっと調査

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途上国のカカオ農園といったサプライチェーンの上流で児童労働などの人権侵害が起きている可能性は、以前からNGOなどにより指摘されてきた。問題が顕在化しない限り、労力やコストをかけてまでサプライチェーン全般を調査する企業はそう多くない。しかし、世界の投資家の意識は企業よりも先に変わりつつある。

2005年に当時の国連事務総長コフィー・アナン氏の呼びかけで、ESGといった非財務指標を投資行為で意識するよう求める「責任投資原則(PRI)」ができた。趣旨に賛同し署名する投資機関は世界で4200超、その運用資産残高は7月末時点で121兆ドルに上る。日本ではGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)や生命保険会社、損害保険会社などが署名している。

それら投資機関から1000人近くが集まる年次総会に水口氏は参加している。3日間の日程で開催されている総会の様子を聞くと、「ここ数年は気候変動に注目が集まったが、人権問題は定番メニューとしてあり、つねに投資家の関心が高い」と述べた。

2018年のサンフランシスコ大会では、開催場所のマリオットホテルで働く移民女性が登壇。客室清掃など重労働の過酷さを訴えた。アマゾンで働くドライバーは、「出社するまでその日の仕事があるかわからない」など労働状況を明かした。「企業が儲かっている背景には労働者の酷使がある」(水口氏)現状を直接聞き、参加者たちはショックを受けたという。

2019年のパリ大会では、西アフリカのガーナの男性が奴隷労働の体験を話した。6歳のときに連れ去られ朝3時から夜8時まで休日なしに漁業で働かされたという。男性は13歳のときに奴隷労働から抜け出した。

日本は投資家の意識もまだまだ

2020年は東京が開催地となる予定だったが、コロナ禍で今秋に開催が延期、最終的には中止となった。

PRI事務局ジャパンヘッドの森澤充世氏によると、欧米と異なり日本では企業年金など資金の出し手(アセットオーナー)によるPRI署名が少ない。それら国内投資家が世界の潮流を感じるきっかけになりえただけに、中止は惜しいところだ。

1兆ドルを超す運用資産を有するアメリカの投資運用会社であるティー・ロウ・プライスは、日本企業の情報開示姿勢について環境面では改善が進んでいると評価する。

一方、企業と直接対話するシーンで、優先順位の上がってきたトピックとするのが人権DDだ。日本株式運用ポートフォリオ・マネジャーのアーシバルド・シガネール氏は、「情報がどの程度開示されているかやコンプライアンス違反が発生した場合にどう備えているか」をチェックしている。

「問題として顕在化していないので人権リスクへの対応は十分だろう」という姿勢では、もう切り抜けられない。そのような時代が来ている。人権DDは「人権方針」などを策定し企業トップ自らが取り組む姿勢を見せることから始まる。日本企業だけでなく、それらの企業に投資する国内投資家も経営層から意識を変えなければならない。

兵頭 輝夏 東洋経済 記者

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ひょうどう きか / Kika Hyodo

愛媛県出身。東京外国語大学で中東地域を専攻。2019年東洋経済新報社入社、飲料・食品業界を取材し「ストロング系チューハイの是非」「ビジネスと人権」などの特集を担当。現在は製薬、医療業界を取材中。

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