企業の法定雇用率は2021年3月から「2.3%」となった。業界全体ですでに2019年時点に達成している小売業などがある一方、不動産業といった大きく未達の業種も少なくない。
個別企業でもすでに2.3%以上の企業は421社存在する(『CSR企業白書』2021年版には600位まで掲載)。このように障害者雇用は業種、企業間で大きく差がつき始めている。『CSR企業総覧』の掲載企業はESG(環境・社会・ガバナンス)等の取り組みを進めていることが多いが、いまだに2.3%を下回っている場合は「後れている」と危機感を持ったほうがよい。
「令和3年版障害者白書」の推計によると日本の障害者は身体障害者436.0万人、知的障害者109.4万人、精神障害者419.3万人。複数障害保有者を重複することになるが単純合計では964万人と国民の7.6%が何らかの障害を持っている計算になる。
障害者は身近にいる存在で決してごく一部の人ではない。こうした中で国や自治体からの助成金やサポートを受けながら社会全体で障害者の活躍の場を作っていこうというのが障害者雇用の役割だ。
全員がパラアスリートのようにはなれない
仕事をして一定の収入を得ることで障害を持つ人たちに自信が芽生えるケースも多いという。すべての障害者が働けるわけではないが、可能な範囲で職に就くことは共生の第一歩になりそうだ。
個人的な話になるが、30年近く前に私の弟はバイク事故で障害者となった。その後、正規雇用に近い障害者雇用で働くことができ、結婚して子どもも育ててきた。当時両親は「これから1人の力で働いていけるのか」と心配していた。こうした不安は働く場所が得られ生活が安定していく中で徐々に減っていったようだった。
多くの障害者本人やその家族の方もひょっとすると私の両親と同じような思いがあるかもしれない。ただ、それは生活の基盤が安定していくと軽減される可能性も高い。
パラリンピックのスーパーアスリートたちは大きな感動を与えてくれた。しかし、障害を持つ普通の人たちが全員そうしたスターになれるわけではない。地味でもそれぞれの能力を生かして、生きがいをもって働いていける社会こそ「共生社会」と言えるはずだ。障害者が働ける場所はもっとあると考えられる。企業はそれぞれの職場で知恵を出し、今後もさらなる雇用拡大を期待したい。
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