「惚れたら負け」結婚希望の30代女性が学んだ忍耐 2カ月連絡が途絶えた相手と結婚した経緯

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スター選手を生で見られて気分転換ができた2日後、見覚えのあるメールアドレスから「オールスター、楽しかったですか?」とメールが来た。智也さんだ。紀香さんはうれしさを隠しきれなかったが、「会いましょう」と自分から提案するのは踏みとどまった。

「それから3週間後ぐらいに誘ってもらって会い、その5回後のデートで告白してくれました。私の好意はやっぱりダダ漏れに伝わっていたみたいですが、彼は『次に付き合う人とは必ず結婚する』と決めていて慎重になっていたそうです」

男性のほうが慎重で、交際までに時間がかかるというのは婚活の場ではよくある光景だ。その態度は優柔不断に映り、相手の女性から愛想を尽かされてしまうこともある。紀香さんはわざわざ上京して精神的に支えてくれた母親に感謝している。断られたショックでオールスター観戦していなかったら、智也さんからののんきな「楽しかったですか?」メールを怒りで無視していたかもしれない。

「やっぱり惚れたら負けなのですね」

結婚後も智也さんの口下手は変わらない。雑談が苦手で、会話のポイントがズレたり一般常識に欠けていると感じたり。仕事の忙しさを理由に子育てにあまり関わらない時期もあった。

「彼がコロナになってからは特に大変でした。治ってからも心配で、早朝に仕事に出かける彼に温かい紅茶を入れてあげていたのですが、目を覚ました息子がグズってしまって私の余裕もなくなり……。子育て支援拠点に行って女医さんにカウンセリングしてもらったほど追い詰められていました」

今では智也さんも状況を理解して、積極的に子育てに参加している。夕方の散歩と称して15分ほどでも息子を外に連れ出してくれる。24時間体制で子どもと向き合っている紀香さんはそれだけでもありがたく感じる。

「お金の管理もすべて私に任せてくれています。ローンを組んで家を買うときも何も言いませんでした。家庭のことに関しては私の意見を尊重してくれることもありがたいです。もっと感謝しなくちゃいけませんね」

このように思い直す紀香さんだがまだ不満が残る。智也さんからのわかりやすい愛情表現がないことだ。

「彼の好きなタイプは深田恭子で、私の外見はまったく似ていません。私のどこが好きなのかを聞いても、『ごはんがおいしい』と言うぐらい。私は飯炊きのおばさんかい!と思うことがあります。母に言わせればそれがいちばんの愛情表現らしいのですが……」

智也さんが本当に自分を好きでいてくれるのか。紀香さんは不満なのではなく不安なのだ。

一方、誠実だけど口下手で世間知らずなところがある智也さんは、話し上手でしっかり者の紀香さんを頼もしいパートナーだと思っているはずだ。それは恋愛よりも強固な人間関係である。

やっぱり惚れたら負けなのですね、とうれしそうに語る紀香さん。結局、幸せなノロケ話を聞いたのだと気づいた。

本連載に登場してくださる、ご夫婦のうちどちらかが35歳以上で結婚した「晩婚さん」を募集しております。事実婚や同性婚の方も歓迎いたします。お申込みはこちらのフォームよりお願いします。
大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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