菅首相退陣「小渕」「小泉」「安倍」内閣との決定差 高支持率を保ったままで総裁選に臨めなかった

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(撮影:尾形文繁、omohiro Ohsumi/Bloomberg、Rodrigo Reyes Marin/Zuma Press/Bloomberg、Nicolas Datiche/Sipa/Bloomberg)
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「新型コロナ対策と多くの公務を抱えながら総裁選を戦うことは、とてつもないエネルギーが必要です(中略)。新型コロナ対策に専念すべきと思い、総裁選挙には出馬しないと判断しました」

9月9日に緊急事態宣言の期限を延長することを発表した記者会見で、菅義偉首相は改めて退陣することを表明した。すでに9月3日の自民党役員会で首相は総裁選不出馬を表明していた。

首相が退陣を決意した経緯についてはすでに多くの報道がなされている(『朝日新聞』2021年9月10日、『日本経済新聞』2021年9月4日、『西日本新聞』2021年9月4日等)。首相のもとで次期総選挙を戦えるのかという不安が広まったこと、解散と総裁選先送りを模索したことに不満が広まったこと、党人事の試みが保身策と見られたことなどが共通した首相の行き詰まりの原因と指摘されている。

自民党議員の間で広がった「選挙の顔」への不安

首相の退陣に直接繋がったのは解散や人事などの状況打開策であろう。しかし、最も重要な要因は菅首相が「選挙の顔」となれるのかという不安が自民党の衆議院議員の間で広がったことであることは間違いない。8月に首相の地元の横浜市長選で自民党系の候補が大敗する一方、自民党が実施した選挙情勢の調査で苦戦が予測されたということが党内で広まったために、多くの自民党議員が首相が「選挙の顔」となることができるのか疑問を抱くようになってしまった。

首相退陣に至る過程で重要だったのは、今月に一般党員の投票も認められる総裁選、いわゆるフルスペック総裁選が予定されていたことである。自民党の国会議員や一般党員にとっては首相が「選挙の顔」となりうるのか判断し、場合によっては、他の自民党政治家を総裁に選出することができる機会を与えられていたことになる。

衆議院が現在の小選挙区・比例代表並立制を採るようになってから、自民党の政治家が現職首相を務める中で、行われたフルスペック総裁選は過去3回あり、今回が4度目となる。これまで小渕恵三首相、小泉純一郎首相、安倍晋三首相がフルスペック総裁選に臨み、いずれも勝利を収めている。

首相が「選挙の顔」になれるのかどうか判断するうえで重要な材料は内閣支持率である。一般党員は世論全体の動向と沿う傾向にあると考えられ、フルスペック総裁選で首相が再選を果たすうえでは、内閣支持率が高いことが特に重要である。

過去フルスペック総裁選を経験した首相が率いた内閣の支持率と菅内閣の支持率はいかに違ったのか。菅首相にとって、総裁選の再選が厳しい状況にあったか。また、フルスペック総裁選に臨んだ首相が総裁選の時期には内閣支持率を高い水準に保つことができたのに対し、菅首相はそれに失敗したことを説明したい。(なお、この記事で用いる内閣支持率は朝日新聞社による世論調査を用いている)

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