菅首相退陣「小渕」「小泉」「安倍」内閣との決定差 高支持率を保ったままで総裁選に臨めなかった
安倍晋三首相のケース
直近の例は2018年9月の総裁選である。この総裁選には現職の安倍晋三首相と石破茂元地方創生相が出馬した。2014年1月の党大会で総裁選の規定が改められ、国会議員票と地方票は同数とすることが決まった。この総裁選は議員票405、地方票405という配分の下、争われた。この総裁選では安倍首相は国会議員票329、地方票224を獲得し、石破元地方創生相は議員票73、地方票181を集め、安倍首相が自民党総裁3選を果たした。
この総裁選に先立つ2018年3月に森友学園に国有地を売却する契約を国と森友学園が結ぶことを決める財務省の決裁文書の内容を決裁後に書き換えていたことが発覚し、内閣支持率は急落する。
また、この年の通常国会では野党は加計学園に獣医学部が開設された経緯についての疑惑の追及を続けた。この疑惑は前年3月に表面化していた。首相が加計学園に獣医学部を開設するための便宜を図ったのではないかという疑問がその主たる内容であった。
こうして内閣不支持率が内閣支持率を上回る状況が続く。しかし、9月に支持率が不支持率を上回る。支持率が回復する中で、安倍首相は再選を果たした。
現在利用可能な資料の中から、いずれの総裁選でも各首相が来るべき総選挙で「選挙の顔」「党の顔」となりえるかどうかが自民党内で不安視されたという報道を見つけることは難しい。
それでは菅内閣の場合はどうだったのであろうか。菅内閣の場合、支持率は徐々に低下、低迷した。首相は解散をせず、総選挙が間近に迫っている中で、総裁選が行われることになった。すでに述べたように横浜市長選の結果や自民党が実施した選挙情勢の調査のために、首相が「選挙の顔」となることが党内で疑問視されるようになった。
内閣支持率が低迷した理由は菅首相が世論の期待する政策を実施せず、多くの国民が内閣のコロナ対策に不満を抱いたからである。
第3波と「Go Toトラベル」
菅内閣は2020年9月の発足当初は高い支持率を誇り、65%を記録した。しかし、12月に急落し、2021年1月には内閣不支持率が支持率を上回る。
急落した背景には菅首相の第3波の拡大に対する対応があると考えられる。2020年10月上旬には新型コロナウイルス感染症の第3波の拡大が始まる。その一方で、菅首相は10月1日に 「Go Toトラベル」の対象地域に東京都を加える。7月に安倍内閣は東京都を対象地域から外してこの政策を始めていた。
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