菅首相退陣「小渕」「小泉」「安倍」内閣との決定差 高支持率を保ったままで総裁選に臨めなかった
しかし、感染が広まるにつれてこの政策に対する世論の反対姿勢は強まっていく。10月の間は、この政策への評価は拮抗していた。10月中旬に実施した朝日新聞社が実施した世論調査によれば、トラベルの実施を「評価する」、「評価しない」と回答した人はそれぞれ47%、43%であった。
読売新聞社が同じ時期に行った調査でも同様の結果が出ており、トラベルの実施を「適切」、「適切でない」と答えた人はそれぞれ48%、44%であった。しかし、11月中旬の朝日新聞社の調査では51%が「反対」、37%が「賛成」と逆転する。12月上旬に読売新聞社が実施した世論調査では「いったん中止するほうがよい」「やめるほうがよい」と回答した人が全体の77%にのぼった。しかし、菅首相は大阪市と札幌市を対象地域から外したものの、継続することにこだわった。
12月13日に毎日新聞社の世論調査が発表され、内閣支持率が前月の57%から40%に急落する。この結果を前に、首相は12月28日から「Go To トラベル」を中止することを決める。
第3波の際、緊急事態宣言の発令にあたっても首相の判断は世論の期待に後れを取る。12月14日に公表されたNHKの世論調査では57%が緊急事態宣言を「出すべき」だと答え、「出す必要はない」の30%を上回っていた。また、12月28日に読売新聞が報じた世論調査では、「出すべきだ」という回答が66%、「その必要はない」という回答は29%であった。
しかしながら、首相は12月の間は緊急事態宣言の発令に消極的であった。2021年1月2日に小池百合子都知事が西村康稔新型コロナウイルス感染症対策担当大臣に緊急事態宣言の発令を求める。この後、1月7日に首相は緊急事態宣言の発令を決めた。
感染再拡大と五輪・パラ開催への不満
その後、第3波が3月に収まり、緊急事態宣言が解除されると内閣支持率はいったん回復する。しかし、その後、第4波が4月上旬から拡大し、菅政権は4月下旬に緊急事態宣言を再び発令する。5月に支持率は急落する。
この背景にはいくつかの要因があったと考えられる。1つは感染がまた拡大したこと。2つは、五輪・パラリンピック開催への不満があること。5月中旬に朝日新聞社が実施した世論調査では東京五輪について「再び延期する」「中止する」べきという回答が全体の83%を占めている。
同じ頃に報じられた共同通信社の調査でも五輪・パラリンピック開催について59.7%の回答者が反対したのに対し、無観客あるいは観客数を制限したうえで開催することを支持したのは37.8%である。しかしながら、首相は五輪・パラリンピックを開催する姿勢を変えなかった。
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