菅首相退陣「小渕」「小泉」「安倍」内閣との決定差 高支持率を保ったままで総裁選に臨めなかった

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その後も支持率は低迷し、五輪の開催も支持率を上向かせる効果はなかった。第5波が急速に拡大する中で、8月上旬に実施された調査で、支持率は28%に落ち込む。

ワクチン接種にも不満

この間、世論調査で見る限り、国民の多くは菅政権のコロナ対策について厳しい判断を示してきた。読売新聞社の調査によれば昨年12月の下旬以降、50%以上が菅政権のコロナ感染症対策を「評価しない」という回答を続けている。

首相自身はワクチンの接種を進めたことを成果と考えている。9月9日の記者会見では「感染者は2.9倍に増えたのに対し、重症者は1.6倍にとどまり、死亡者は6割減少しています。ワクチン接種が進むことで状況は全く異なったものとなり、戦略的な闘いができるようになっているのです」と説明している。

確かに、首相が指導力を発揮したことで、ワクチン接種は当初考えられていた以上のペースで進んだことは間違いない。2021年9月13日時点で1回以上接種した人は7983万人(63.9%)、2回接種完了者は6447万人(49.8%)に達している。

これは菅内閣の大きな実績である。しかしながら、これが内閣支持率を上昇させる材料とはならなかった。多くの国民はワクチン接種の進め方に不満を持った。ワクチン接種がかなり進んだ8月においてさえ、読売新聞社の世論調査によるとワクチン接種について政府のこれまでの対応を58%が「評価しない」と考えている。

ワクチン接種を切り札として五輪・パラリンピック開催を強行しながらも、そのワクチン接種がいくら進んでも逆に感染爆発ともいえるような状況に陥ってしまった。そして医療提供体制の強化が進まず、医療崩壊を招き、救える命を救えなくしてしまった状態を生み出してしまったことも支持率が上向かなかった背景にあるだろう。

今回の退陣に至る過程は、現在の小選挙区比例代表並立制において、首相が政権を維持するうえで、世論からの支持を確保することがいかに重要なことなのかを改めて示している。

竹中 治堅 政策研究大学院大学教授

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たけなか はるたか / Harutaka Takenaka

1971年東京都生まれ。1993年東大法卒、大蔵省(現財務省)入省。1998年スタンフォード大政治学部博士課程修了。1999年政策研究大学院大助教授、2007年准教授を経て現在、教授。主な著書に『参議院とは何か 1947~2010』(中央公論新社/2010年/大佛次郎論壇賞受賞)など。

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