自主映画を40年以上支援し続ける「PFF」の信念 「PFFアワード」から多くの映画人材を生み出す
「PFFアワード」には、昨年までの42回の開催までに、2万3358作品の応募があり、702作品が入選している。応募資格はジャンル、年齢、性別その他一切制限なし。PFF入選監督の中には、黒沢清、塚本晋也、園子温、李相日、成島出、佐藤信介、石井裕也をはじめとした、日本映画界を代表する映画監督の名前がズラリと並ぶ。これまで160名を超えるプロの映画監督を輩出するなど、その実績は折り紙付きだ。
その間、応募者の撮影環境も大きく変わっていった。最初の頃は、応募作のほとんどが8ミリフィルムで占められていたが、1991年にビデオ作品の受け付けを開始してからはフィルムの応募は減少。今ではほとんどがデジタルビデオ作品なっている。2017年からはスマホで撮影した映画の応募もみられるようになった。
今年は前年を上回る489本の応募があり、うち18本が入選した。入選作のうち25歳以下の作品が12本で、49歳の作品もあった。
才能の育成を目指す取り組みも行っている。毎年のPFFアワード受賞者を対象に、自分たちの作りたい映画企画の提出を受けつけ、そこで選考されたクリエーターを対象に、企画開発から一般公開まで、プロの映画作りを一貫して体験することができる「PFFスカラシップ」がそれだ。これまで25本の映画を制作。『二十才の微熱』(橋口亮輔監督)、『運命じゃない人』(内田けんじ監督)、『川の底からこんにちは』(石井裕也監督)など、注目を集めた作品も数多い。
2020年からは、PFFアワード入選作品をオンライン視聴できる機会を拡大するなどオンラインにも力を入れており、今年は「DOKUSO映画館」に加えて、「U-NEXT」でオンライン配信(9月11日~10月31日)されている。
プログラム上映にもこだわり
PFFは、そうしたPFFアワードなどのコンペティションだけではない。「PFFアワード応募者が刺激を受け、さらに面白い映画を作るために知ってほしい映画や映画人」を紹介する目的で、国内外の多彩な映画を集めた「招待作品」や「特集上映」も映画ファン注目のプログラムとなっている。
今年の数ある特集の中でも、荒木ディレクターが特にイチオシだと語るのが、タイの俊英ナワポン・タムロンラタナリット監督の特集上映だ。
デビュー10年で7本の長編映画を発表しているナワポン・タムロンラタナリット監督は、独自の映画手法による軽やかな映画づくりで、国内外からの注目が集まる37歳。長編デビュー作『36のシーン』で釜山国際映画祭ニューカレンツアワードを受賞し、続く第2作『マリー・イズ・ハッピー』はベネチア国際映画祭に出品。4作目の『フリーランス』はタイ・アカデミー賞で8部門を受賞。『ハッピー・オールド・イヤー』は昨年、日本でも劇場公開された。
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