自主映画を40年以上支援し続ける「PFF」の信念 「PFFアワード」から多くの映画人材を生み出す
「彼は今、37歳。日本であれば、一番もがいている頃だと思う。彼は27歳の時に映画監督になりたいと考えたが、チャンスが巡ってこなかったので自主制作で『36のシーン』を撮って、それが世界中の映画祭で注目された。
そんな彼は10代の頃から日本映画を浴びて育っている。是枝裕和さんや河瀨直美さん、岩井俊二さん、北野武さんたちが世界中で評価を得ていた頃。彼自身も日本文化がとても好きで、日本にも何度も訪れている。
映画はとてもクールだし、日本語のセリフだったら、日本の監督の映画だと言われてもわからないと思う。それほど日本映画のスピリッツが彼の中に凝縮されている。ものすごくセンスがいいし、こういう人に本当に出てきてほしかった。この映画を観て、東南アジアなどの映画に対する偏見を取り払ってほしい」と熱をこめる。
海外でもめずらしい、企業が支える映画祭
それ以外にも、ピーター・バラカン氏の解説付きで映画と音楽を楽しむ「ブラック&ブラック」や、映画を志す人のヒントとなるような題材を集めた「PFFスペシャル映画講座」などの特集が行われる。
今年のPFFスペシャル映画講座は、加藤泰監督の『骨までしゃぶる』(1966)上映後に、ジェンダー研究の旗手である、国立歴史民俗博物館・名誉教授の横山百合子氏の登壇も決定。同作を「女子高生必見!」と語る横山氏は、今回のトークで、遊廓や売春の歴史を通じて、映画の背景を解き明かすとしている。
また、2011年に逝去した森田芳光監督の特集上映「森田芳光70祭~伝えたい、モリタを~」では、『ときめきに死す』『メイン・テーマ』『それから』『39 刑法第三十九条』を35ミリ上映。石川慶監督や松居大悟監督など、森田監督を敬愛する監督たちによるトークショーなども行われる予定となっている。
この映画祭にはもうひとつ大きな特徴がある。それは、ぴあという企業の支えによって40年以上も続いているという点。現在は、一般社団法人として独立した組織となっているが、企業が創設する映画祭は海外から見ても珍しいケースだ。
PFFを続ける背景には、「ぴあ」の会社の成り立ちが大きい。矢内廣社長が、アルバイト仲間とともに、映画や音楽、演劇、アートなどのエンターテインメント情報を網羅した月刊情報誌『ぴあ』を創刊したのは、矢内氏が中央大学に在学していた1972年7月のことだ。
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