牛めしの松屋が「弁当専門店」に手を出す事情 コロナ禍で外食大手が中食事業に本格参入

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弁当専門店である松弁キッチンには、松屋が得意とする20~40代の男性客だけでなく、女性、高齢者、ファミリーといった幅広い客層を見込む。「松弁キッチンで、松屋と松のや両方のメニューが混在する『オリジナル弁当』を注文してもらい、そのおいしさを知ってもらえれば、今度は店舗の方に足を運んでもらえる」(浜野氏)。

外食企業の中食参入が相次ぐ

時間短縮営業や休業要請の長期化により、外食業界が苦戦を強いられる一方、弁当・総菜専門店市場は底堅く推移している。

市場全体の売上高は、コロナ影響のなかった2019年の月次と比較しても、2021年5月は4%増、同6月は1%減、同7月は1%増だった(市場調査会社エヌピーディー・ジャパン調べ)。販売チャネルの多角化という観点からも、中食への本格参入を果たす外食企業は増加の一途をたどる。

定食チェーン「大戸屋ごはん処」を展開する大戸屋ホールディングスは、2021年2月末に同社初の総菜小売業態「大戸屋 おかず処」を投入。西武池袋本店やそごう横浜店への催事での出店を皮切りに、さまざまな立地で実験を続けている。

「てんや」「ロイヤルホスト」などを運営するロイヤルホールディングスもフローズンミール「ロイヤルデリ」の売り上げ拡充をもくろむ。てんややロイヤルホストでの店頭販売に加え、自社のネット通販、百貨店での展開に力を入れる。2020年度に3億円ほどだった、ロイヤルデリの売り上げを、約3年で40億~50億円にまで引き上げる構えだ。

コロナ感染拡大当初の2020年前半は「巣ごもり需要は一過性のもの」と切り捨てる企業も多かったが、コロナ禍が想定以上に長引くなか、本格的に中食での事業化を見据える外食企業は後を絶たない。内食・中食・外食の垣根が低くなるなか、胃袋をつかむ闘いは熾烈化を増すばかりだ。

中尾 謙介 東洋経済 記者

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なかお・けんすけ

1998年大阪府生まれ。現在は「会社四季報」編集部に在籍しつつ水産業界を担当。辛い四季報校了を終えた後に食べる「すし」が世界で1番美味しい。好きなネタはウニとカワハギ。

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