「日経平均3万円超」で、今すぐに株を買うべきか 本当に海外投資家は日本に期待している?

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こうした焦りから買い出動した海外投資家はいるようで、現物の日本株(東証1部、2部、マザーズや名証などの総合計)の海外投資家の売買金額を見ると、8月第3週は3634億円の売り越しであり、第4週も小幅ながら45億円の売り越しであったものが、先物に遅れて9月第1週は3669億円の買い越しとなった。これが先週(9月第2週)も買い越しで続いている可能性がある。

一方、国内投資家の間では「足元の政治情勢を踏まえて、日本株を思い切って買いだとは判断しないが、海外投資家がわれわれの知らない何かを知っていて、本格的な日本株買いに出動し始めたのではないか」と悩んでいる向きも多いようだ。

つまり、海外投資家は国内投資家が何か隠れた買い材料を持っているといぶかり、国内投資家は海外投資家が何か確信を持って買い上げていると思うといった、相互の「疑心暗鬼」に陥っているようだ。しかし、こうした疑念による買いもそう長くは続くまい。

こうした点から、足元の日経平均はいったん下押しし、上値を再度探るのは、10月ともみられる総選挙のあと、そのタイミングで4~9月期の決算内容を踏まえてから、と見込んでいるわけだ。

ジワジワと上値の重さが忍び寄るアメリカ株

実は、多くの内外投資家の目が日本株の急伸に奪われているところ、アメリカの株価指数の頭が極めて重くなってきたことのほうが、筆者は気にかかる。

まだアメリカの株価は上値を伸ばす余地があると見込むが、その余地はかなり狭まった。来年、テーパリング(量的緩和縮小)が実際に進み、本格的な株価反落に至る前の今年内の株価上昇は「最終段階」に差しかかりつつあるのだろう。

それでも上値余地があると見込むのは、企業収益の増勢が続くと期待できるところによる。アメリカのファクトセット社が集計した、S&P500種採用銘柄のこの先12カ月間の1株当たり利益のアナリスト予想値の平均値を見ると、前年比で4割強の増益が見込まれている。

しかしその前年比は、前年同期がコロナ禍を抜け出して収益水準が大きく戻る局面であったことを割り引いても、伸び悩みに陥っている。一方、株価はかなり先行きの収益増まで織り込んでしまった感がある。結果として予想PER(株価収益率)も高水準で、アメリカ株がこのさき大幅に上伸するとは予想しがたい。

そのため日本株については、アメリカ株上昇という「支援」があまり期待できないとすれば、当面いたずらに悲観視する必要はないものの、いくばくか慎重に見ておいたほうがよいのだろう。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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