松本人志にフジテレビとTBSがこんなにも頼る訳 局を挙げた大型特番のオファー集中に映る危機感

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若年層を中心に「テレビはつまらなくなった」とみなす人々がYouTubeや動画配信サービスに流れ、視聴率が下がると、さらに表現の幅が狭まって似たような番組が増えていく……。加えて昨年あたりから芸人たちがYouTubeやインスタグラムなどで伸び伸びと笑いを取るようになったことで、テレビバラエティの存在意義に危機感を抱き、「何とかしたい」と思っているようなのです。

松本さん関連の特番が増えている理由として、もう1つ忘れてはいけないのは、昨春の視聴率調査リニューアルによって、民放各局が主に10~40代に向けた番組制作を進めていること。とりわけ若年層に受けのいい、お笑い系番組のニーズが高まり、その象徴としてお笑い界のトップである松本さんの力が必要になっているのです。

YouTubeには報酬で勝てない

松本さんと仕事をしているテレビマンたちが、820万を超えるツイッターのフォロワー数を認識していないはずがありません。さらに「もし松本さんがYouTubeをはじめたら、報酬の面でテレビは勝てないだろう」ということも意識しているでしょう。

また、松本さんはこれまでAmazonプライム・ビデオで「ドキュメンタル」シリーズや「FREEZE」を手がけてきたことから、地上波の放送だけにこだわっているわけではない様子がうかがえます。もちろん地上波への愛着はあるでしょうが、これ以上表現の幅が狭くなってしまったら「この内容なら配信かな」「あれはYouTube向きかも」などと考えるケースが増えてもおかしくありません。

だからこそ各局のテレビマンたちは、これまで以上に松本さんを面白がらせ、前のめりにさせる企画を提案し続ける必要があるのです。その先頭にいるのがTBSとフジテレビであり、積極性の表れが松本さん関連の特番ラッシュにつながっているのではないでしょうか。

これまで松本さんは漫才や大喜利を筆頭に、言葉選びの面白さで人々を笑わせてきましたが、年を追うごとに「考えさせ、気づきをうながす」「優しく包み込む」というコメントも増えてきました。それが年齢や立場によるものなのか、それとも時代に寄り添う姿勢なのかはわかりません。しかし、作り手側にとっては企画の幅が広がり、さらなる新たな特番のオファーにもつながっていくでしょう。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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