まるで大型トラックのようなクル144とクモル145は、「配給車」と呼ばれている。
その主な任務は、台車やモーター、クーラーといった車両の修理部品を運ぶというもの。なるほど、運搬先である工場や車両基地には当然ながら線路が通じているので、大きな部品をスピーディーに運びたいなら、自分たちの線路を使うのが確実である。
このクル144とクモル145は、1980年から1982年にかけて、101系通勤型電車を改造する形でそれぞれ16両が登場。旧形の配給車を置き換え、東京と大阪で活躍した。
荷台で吹奏楽コンサート
だが、列車本数の増加で配給車を運行する余裕がなくなってきたことや道路整備が進んだことにより、次第に出番が減少。JR東日本からは2008年に姿を消し、その翌年にはJR西日本でも2編成が廃車されて、1編成が残るのみとなった。この1編成も、本来の任務である部品輸送に使われたのは6年ほど前が最後で、現在は京都支所内で入れ換えや線路のさび取りに使われるだけだったが、ついに2021年度をもって引退することが決まった。
クル144とクモル145は、一般向けの最後の公開として、2021年8月に京都鉄道博物館で特別展示を実施。初日に搬入イベントが行われたほか、8月14日には荷台を使った吹奏楽コンサートが行われ、多くの人が“最初で最後の音楽イベント”を楽しんだ。
展示最終日となった8月18日に行われたお別れセレモニーでは、DE10形ディーゼル機関車に牽引されたクル144とクモル145が、展示場所からの出発時に警笛を鳴らすなど、粋な演出も。鉄道ファンにとっても車両にとっても、思い出に残ったことだろう。
国鉄時代にデビューし、JRとなってからも長らく安全運行を支え続けた、2つの事業用車両。姿を消す彼らに、改めて「おつかれさま」の言葉を贈りたい。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら