姿消す国鉄時代の「検測車と配給車」最晩年の記録 JR西「443系」「クル144・クモル145」の役目とは?

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あずき色のカラーリングが特徴の電気検測試験車「443系」(撮影:伊原薫)
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列車に乗って移動していると、あまり見かけない車両に遭遇することがたまにある。代表的なのは、東海道・山陽新幹線を走る「ドクターイエロー」だろう。「走っている姿を見かけたら幸運になれる」という“都市伝説”もあるが、その本来の役目は列車が安全に走行できるよう、線路や架線、信号といった設備を検測するというものだ。ドクターイエローは新幹線用の検測車両だが、JRの在来線や一部の大手私鉄でも、同様の車両が活躍している。

国鉄が分割民営化してから30年以上が経ち、JRの検測車両は多くが世代交代を果たした。そして2021年、国鉄から引き継がれた検測車両がまた一つ、姿を消す。

国鉄特急型電車の外観

2021年8月のある日、大阪府吹田市にあるJR西日本吹田総合車両所の一角に、あずき色の車両が止まっていた。クモヤ443とクモヤ442からなる「443系」の2両編成で、かつて日本全国で見られた485系特急型電車などと同じく、運転台が高い位置にある。一方、側面の窓は急行電車や快速電車のように開閉が可能。さらに、板で塞がれた大きな開口部もあり、一部は板が撤去されて車内が見えていた。

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この車両は、電気検測試験車と呼ばれる車両だ。走行しながら架線の状態を検測し、もし不具合があれば補修などの必要な措置を手配する。車内には計測用の機器が所狭しと配置され、屋根の部分には架線の状態を監視するためのドームも設けられていた。かつては検測スタッフがここから目視で確認していたが、後にカメラが設置され、映像データを残せるようになったことで、より詳細な検測やデータ管理が可能となった。

443系は、国鉄時代の1975年に2編成が登場。分割民営化後はJR東日本とJR西日本が1編成ずつ引き継いだが、JR東日本の車両は2003年に新型の検測車に置き換えられた。JR西日本に残ったこの第2編成は、以降も検測機器を最新のものに更新しながら現役を続行。直流区間と交流区間の双方を走れる強みを生かし、JR西日本の電化区間はもちろん、JR四国やJR九州、さらには一部の第三セクター鉄道でも検測を行っていた。まさに八面六臂の大活躍である。

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