コロナで苦境の温泉地「源泉も疲弊」の深刻な問題 湧出量はピーク時の9割程度に減少、泉温低下も

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環境省は毎年「温泉利用状況」を発表している。都道府県別に温泉地数や源泉総数、湧出量、宿泊施設数などをまとめたデータである。

最新版の「令和元年度(2019年度)温泉利用状況」から、日本の温泉を取り巻く状況、気になるデータを検証してみよう。

【温泉地数】 2971 前年比11減

温泉地数は2010年度の3185をピークに微減傾向が続き、2017年度に3000を割り込んだ。都道府県別では北海道の243が最多で、長野県205、新潟県145と続く。最も少ないのは沖縄県の11。

宿泊施設数は1万3050軒で、前年(2018年度)よりも175軒の増加。とはいえ、ピークだった1995年度の1万5714軒に比べると2600軒余り減っている。

湧出量はピーク時の9割

湧出量はどうなっているだろうか。

2019年度の湧出量は日本全体で251万8113 L/分となっている。これはピーク時2007年度279万9418 L/分の約9割の水準である。12年間で1割低下したことになる。

2019年度湧出量上位県の状況はどうか。ピーク時の2007年度と2019年度を比較してみよう。

          2007年度     2019年度
① 大分県    31万5056 L/分   29万4646 L/分 
② 北海道    26万9158 L/分   19万6902 L/分
③ 鹿児島県   19万9782 L/分   16万1668 L/分
④ 青森県    17万4139 L/分   14万6233 L/分
⑤ 熊本県    14万1796 L/分   13万3585 L/分 

上位5道県すべてで湧出量が減少している。これは注目すべき結果である。

情緒あふれる光景(由布院温泉=筆者撮影)

もっとも、湧出量が低下したからといって、必ずしも資源減少とは言い切れない面がある。源泉の集中管理システムの導入により、過剰な利用をやめて適正利用になってきているかもしれないからだ。

そこで、湧出量の内訳を検証してみた。2019年度は自噴66万7549 L/分、動力185万564 L/分となっている。2007年度は自噴82万1438 L/分、動力197万7980 L/分。湧出量全体に占める自噴の割合が2007年度は29.3%だったのが、2019年度は26.5%へと低下している。

源泉の内訳で見ても、2019年度の自噴源泉は4079と利用源泉全体の4分の1しかない。温泉開発があまり盛んでなかった1966年度(昭和41)は自噴6060、動力5826と、自噴が上回っていた。自噴源泉数、自噴湧出量の減少は、やはり資源枯渇への警鐘というべきだろう。

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