ロシア反体制リーダーが受ける獄中「心理的拷問」 ナワリヌイが初めて語った獄中生活の実態
「入れ墨と鉄の義歯を入れたマッチョな男たちがナイフを振りかざして窓辺のいちばん良い場所にあるベッドを奪い合う。そんな光景を思い浮かべる人もいるだろう。そうではなくて、中国の強制収容所のような所をイメージしてもらいたい」とナワリヌイは記した。「全員が一列になって行進し、あらゆる場所に監視カメラがついているような場所だ。絶え間なく管理され、密告の文化もはびこっている」。
自身が置かれた厳しい状況にもかかわらず、ロシアの今後については明るい展望を示した。権威主義国家でも選挙を通じて体制の転換を成し遂げる戦略を持っているという。
現代のロシアで政治犯が経験しているのは主に「心理的な暴力」で、その中で大きな役割を果たしているのが、ひどく退屈なプロパガンダ映像の視聴だと明かした。
ロシアが好んで使う「眠らせない拷問」
ナワリヌイによれば、囚人には1日に5回のテレビ視聴セッションが科せられている。1回目は、朝の体操、朝食、庭の掃き掃除が終わるとすぐに始まる。
その後、少しの自由時間を経て2時間の視聴。昼食をはさんで、さらに視聴。夕食後にも視聴セッションが組み込まれている。午後のセッションの1つは、視聴の代わりにチェスかバックギャモンをすることも認められている。
ナワリヌイは「大祖国戦争(第2次世界大戦)関連の映画を見させられている」と述べた。「40年前のある日、わがアスリートがアメリカ人やカナダ人をどのように打ち負かしたのかという映画になることもある」
こうしたセッションを通じてナワリヌイは「プーチン体制のイデオロギーの本質をはっきりと理解するようになった」という。「その本質は、現在と未来を過去に置き換えることにある。実に英雄的な過去、美化された過去、あるいは完全に創作された過去。未来について考えをめぐらせたり、現在について疑問を持ったりすることができないよう、このような過去にひたすらスポットライトを浴びせ続けるのだ」。
長時間のテレビ視聴は、歴史的に政治色の強い囚人が収監されてきた第2刑務所では極端なまでに徹底されている。しかし、この手法は程度の違いこそあれ、ほかの刑務所でも採用されているものだ。
発端には2010年に始まったロシアの刑法改革がある。改革の目的は、囚人を常に看守の管理下に置き、ギャング化した囚人の影響力を弱めるというもの。従って長時間のテレビ視聴は、洗脳というよりは管理のための手法だと、ロシア刑務所制度の専門家らは指摘する。