新型コロナ感染率「血液型で異なる」科学的根拠 なぜ「O型は重症化しづらい」と言われるのか

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このように、血液型によって、感染しやすい微生物や免疫力が違ってきます。その違いをまとめてみます。

●A型の人は抗B抗体を持っている。このため、B型の血液型物質を持った微生物には感染しにくい
●B型の人は抗A抗体を持っている。このため、A型物質を持った微生物には感染しにくい
●O型の人は、抗A抗体も抗B抗体も持っている。このため、A型とB型の微生物には感染しにくい。また、両方の抗体を持つことで、免疫力が4つの血液型でいちばん強い
●AB型の人は、抗A抗体も抗B抗体も持っていない。このため、感染症全般に弱い。抗体の量も生まれつき少ないので、免疫力がもっとも弱い

微生物はA型のほうがB型より数が多いため、抗A抗体を持たないA型の人はB型よりも感染症に罹患する可能性が高くなります。

以上のことから、免疫力を強い順に並べると、

「O型 → B型 → A型 → AB型」

となります。

免疫力は食事や生活環境に影響される

ただし注意してほしいのは、O型は新型コロナに感染せず、A型やAB型は感染する、といっているのではないことです。

『血液型と免疫力』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

「他の血液型と比較したとき、O型は免疫力が高く生まれついている」という話です。「O型の人は、他の血液型に比べて、新型コロナに感染・重症化の確率が低い」ということで、「感染しない」とはいっていません。

私たちの免疫力は、食事や生活環境、生活サイクル、睡眠の状態、運動、ものの考え方、ストレスの度合いなど、さまざまな要因で違ってきます。その一つとして、血液型がある、と考えるとわかりやすいでしょう。

人の免疫力とは、食事や生活、睡眠、ストレスの状態に大きく影響されます。食事や生活の状態がおろそかになっていれば、O型とはいえたちまち低下しますし、A型やAB型の人も免疫力を強化する生活を心がけていれば感染を防ぐことができます。

こうした血液型による違いと免疫の性質を知って健康増進に活かしていくことが、コロナ禍ではなおのこと重要となってくるのです。

藤田 紘一郎 東京医科歯科大学名誉教授

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ふじた こういちろう

1939年、旧満州に生まれる。東京医科歯科大学医学部を卒業し、東京大学大学院医学系研究科博士課程を修了。医学博士。アメリカ・テキサス大学にてリサーチフェローののち、金沢医科大学教授、長崎大学教授、東京医科歯科大学大学院教授を経て、現職。専門は寄生虫学と熱帯医学、感染免疫学。腸内細菌の研究の権威。1983年、寄生虫体内のアレルゲン発見で、小泉賞を受賞。2000年、ヒトATLウイルス伝染経路などの研究で日本文化振興会・社会文化功労賞および国際文化栄誉賞を受賞。
2021年5月14日、藤田紘一郎さんは逝去されました。ご逝去の報に接し、心から哀悼の意を捧げます。『血液型と免疫力』(宝島社新書)は生前に執筆された著書です。

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