自宅療養者1日100人超を診る医師団の過酷な現場

120人の登録医師が24時間対応でもパンク寸前

急増する自宅療養者を救うために夕方から明け方にかけて1都3県を走り回っている医師たちがいる(筆者撮影)
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コロナ第5波によって、医療崩壊が現実のものとなりつつある今、訪問診療を行う民間の医師派遣業者が存在感を高めている。

都内の中堅総合病院に勤務するドクターの1人は言う。「国や都も問題視しているが、コロナ患者向けの病床を確保しているにもかかわらず、実際には患者を受け入れていない病院が多く存在する。うちの病院もその1つ。人員やコストを考えたとき、業務のオペレーションはもちろん、経営の圧迫に繋がりかねないからだ。ただ、1人の医師としては納得できない思いもあり、半年ほど前から民間の医師派遣業者に登録。空いた時間に、訪問診療を行っている」。

こうした思いを抱える医師は少なくない。「自分もコロナ患者のために働きたいと医師派遣業者に登録するドクターが増加している」と語るのは業者の1つ「ナイトドクター事務局」(本部・東京都港区赤坂)の代表・菊地拓也氏だ。

平日で100件、週末は200件超の依頼

「現在120人ほどの登録ドクターを抱え、1都3県、24時間体制で訪問診療を行っているが、第5波で自宅療養者の数がどっと増えてからは、毎日が戦場。忙しすぎて、正直パンク寸前だ」(菊地氏)

厚生労働省によれば、今月1日の時点で新型コロナウイルスに感染して自宅療養している人は全国で約13万5000人。自宅療養中に重篤化したり死亡したりする患者も増えており、国民の不安は高まっている。こうした状況の中、病院に受け入れてもらえない患者にとって〝救世主〟的な役割を果たしているのが、民間の医師派遣業者なのだ。

夕方18時過ぎ。ナイトドクター事務局のある都内のオフィスは、殺気立っていた。ひっきりなしに電話が鳴り響き、10人ほどのスタッフたちが対応に追われている。その中心にいるのが代表の菊地氏。寝不足なのかまぶたを腫らし、血走った目でシフト表を睨みながら、髪を振り乱してスタッフに指示を出す。

ナイトドクターの事務局。電話がひっきりなしにかかってきていた(筆者撮影)

「ERドクター(救急医師)を渋谷でゲット。すぐに荒川区へ移動して男性の自宅でPCR検査を実施。その足で上野、次に池袋、新宿。すべてコロナの疑いあり。感染対策を厳格に実施してください。荒川には何時に到着できそうですか?」

医師を運ぶドライバーとこんなやり取りが延々と続く。日々どれくらいの依頼があるのか。菊地氏は「平日で約100件、週末ともなれば200件を超える日も。エリアごとに待機ドクターと看護師がいて、ドライバーが彼らを拾って患者さんの自宅に向かう。1日平均10〜15人のドクターと看護師を確保。夕方から明け方にかけて、100〜200人の患者さんを診るという感じ」と語る。

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