新型コロナ感染率「血液型で異なる」科学的根拠 なぜ「O型は重症化しづらい」と言われるのか

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私たちは、血液型によって異なる抗体を持っています。

血液型は、赤血球のまわりにとげのようにたくさんある「糖鎖」で決まります。血液型で異なる糖鎖を「血液型物質」と呼びます。A型の人はA型物質を、B型の人はB型物質を持ちます。AB型はA型とB型の血液型物質を持っていますが、O型の人はどちらも持ちません。ちなみに、血液型物質は、赤血球だけにあるのではなく、全身に広く分布しています。

そして、ここが重要です。免疫は、「自分の血液型物質とは反対の抗体」をつくり出します。これによって、以下のような現象が起こります。

●A型は抗B抗体を持つ
●B型は抗A抗体を持つ
●AB型はどちらも持たない
●O型はどちらも持っている

抗体は、異物を排除するためのいわば「武器」。その量の差は、免疫力の差を生み出す一因にもなってきます。つまり、抗A抗体も抗B抗体も持つO型は免疫力がもっとも強く、どちらも持たないAB型は免疫力が弱くなりやすいのです。

なお、A型の人が抗A抗体を持たないのも免疫の重要な働きの一つです。万が一にも、全身に分布する血液型物質に抗体がつくられたら、抗体が自分の血液型物質に攻撃を仕掛け、激しい炎症が全身で起こってしまいます。そんなことが起こらないよう、免疫には、自分に有益と判断したものには抗体をつくらず、受け入れるしくみが備わっています。これを「免疫寛容の法則」といいます。

微生物との闘いのなかで強固な免疫力を築いた

人類が誕生したとされるのは、およそ700万年前。地球上で人類は、細菌や寄生虫、ウイルスなど病原性の強い微生物にさらされながら進化してきました。人類は微生物との闘いのなかで強固な免疫力を築き、それをうまく働かせることで、今日まで命をつないできました。

そうした微生物との闘いのなかで、人間は抗A抗体も抗B抗体も持つようになったと考えられます。実は、血液型物質は、人間だけが持つのではなく、細菌や寄生虫、動物など、地球上のあらゆる生命体に共有される遺伝物質なのです。病原菌が体内に侵入してきたとしても、その血液型物質に対抗する抗体を持っていれば、ただちに排除できます。

以前、私たちが行った実験です。鶏卵などで増殖し、食中毒を頻繁に起こすサルモネラ菌にはいくつかの種類があり、B型の血液型物質を持つ細菌が多くいます。そのB型の細菌を、O型とA型の血清中で培養したところ、数を増やしませんでした。抗B抗体が増殖を邪魔するからです。一方、B型とAB型の血清中では増殖しました。抗B抗体がないためです。

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