東大エリートの劇的変化から見える日本の行く末 山本康正×小島武仁「資本主義の未来」(後編)
山本:かつては大転換と呼ばれるような事態は、100年に一度くらいのスパンだったのではないでしょうか。それが今は3、4年に一度くらいの頻度で、目まぐるしくいろんなことが起きますからね。ブロックチェーンやビットコインが生まれたときも、2008年当時はごく一部のエンジニアしか存在を知らなかったわけですよ。それが今では誰も彼もがビットコインについて語れるようになっている。同じような種は今もどこかに散らばっていますし、つねにその種を探しているのが投資家なのですが、実はそれと同じ目線があらゆる人にとっても必要な時代になっている気がします。
優秀な学生はESG視点をすでに備えている
小島:ちょっと個人的な肌感覚の話になってしまいますが、今年の4月から学部の学生をゼミで教えるようになったんです。東大生ですからやはり受験エリート的な若者が多いのでは、というステレオタイプな思い込みがあったのですが、実際に学生たちと接してみるとまったくそんなことはなくて。環境のことについて自分なりに活動していたり、国際協力に熱心だったり、ベンチャーをやっている学生が思っていた以上に多かったんですね。
少なくともわれわれが東大生だった頃よりは考えられないほど激増している。研究者も同じで、象牙の塔にこもるのではなく、社会問題を解決するために研究していこう、という意識が高い人が増えているなという印象を受けています。
山本:そうなんですか。私自身はもともと東京大学の大学院で環境学を学び、サステナビリティーや炭素税、クレジットの仕組みといった経済的・法学的な面から、どういった枠組みがいいのかをずっと勉強していましたが、当時の私の周辺ではそういった機運はまだ本格化していなかったと思います。
ただ、最近の若い世代を見ていると、既存のブランドには頼らない層が増えている印象は明らかに受けます。ブロックチェーンとかAIだとか、そういった親世代がまったく知らない分野の企業を選ぶことへの抵抗はグッと減っている。とりあえず新卒で最初は商社に入ります、みたいな人はもはや多数派ではないでしょう。
これは企業と学生間での情報の非対称性が崩れてきたことの証明だとも思っています。かつては企業というものは、入社してみないとわからないことだらけのブラックボックスでしたよね。でも今では学生がインターン経験などを通じて内部を知ることができるようになり、結果として本当に自分が行きたい場所に行けるようになっているんだと思います。情報の入手先がグッと増えて就職サイトも細分化してきたことによる相乗効果もあるでしょう。
中国のGDPがどんどん伸び、相対的に日本のプレゼンスが下がっている状況が続く中で、優秀な学生が大手を離れてベンチャーに行くのもある意味、自然なことだと思います。
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