東大エリートの劇的変化から見える日本の行く末 山本康正×小島武仁「資本主義の未来」(後編)
小島:今挙げた例もサステナビリティーの文脈で捉え直すこともできます。以前は単身赴任で男性社員だけを飛ばせていたのが、共働き夫婦が増えて、待機児童の問題などもあって、もはやそういう体制には戻れない。今の日本が直面している状況は、国難レベルです。だからこそ性別を問わずに使える才能、人的資源を活かしていくために、できることはすべてやらなければいけないし、テクノロジーもどんどん取り入れていかなければなりません。
上の世代は下の世代に学んでいくしかない
山本:日本の大企業への要請という点はもちろん大事ですが、まだ意思決定できる立場にはない、若い世代のビジネスパーソンが気をつけておくべき点は何かありますか。
小島:新しいテクノロジーや流行の話を聞いたらそれを上の世代の人に伝えてみる、ということは意識してやったほうがいいと思いますね。新しいテクノロジーへの感度の高さは、圧倒的に若い人のほうが上です。最近、ある30代の優秀な人が私たちのマッチング理論のことを知ってくれていて、「こういうテクノロジーがあるそうなんですよ」という話を人事部長にしてくれたのがきっかけで、その企業とのコラボが始まるという経験をしました。意思決定者に情報をつなげる立場に回ることを意識的に行うと、いい変化を引き起こせるようになるのかなと思います。
山本:そこはすごく大事ですね。日本だと年功序列制がまだ根強いですから、経験値のあるシニアの先輩が何でも知っているような立場に回っていますが、新しい情報や流行に触れる機会でいえば、若い世代のほうが断然有利ですからね。多忙な立場にいる人ほど、触れていない無知な分野が必ずあるはずなんです。そこは下から伝えていくしかない。
小島:私たち研究者の分野でも同じです。私自身も研究者ですが、最新の情報を知っているのはやっぱり若い人のほうなんですね。若い人から新しいことを教わるのは、恥でもなんでもありません。上の世代は若者から新しいことを学び、下の世代をちゃんと上げていく。組織が成長していく過程では、このサイクルができることが非常に重要です。
山本:経営者の方と実際にお会いしてみると、やはり度量が広い方ほど真摯に下の世代に学びますし、かつ吸収も速いんです。「若造が何を知ってるんだ。俺の経験ではこうなんだ」みたいな人には若者も話そうとしなくなりますから。実はシニア世代の中でも情報格差が進んでいるのではないでしょうか。そしてこの世代間の情報の断絶が日本を相当苦しめているようにも思います。
ただ、組織内にたくさんいる上の世代の中でも、誰に話すべきかを見極める必要もある。直属の上司にいっても潰されるだけだったのに、思い切ってトップに伝えたら予想外の展開になるケースもありますから。