キャタピラーの防衛部門は輸出事業として成り立っており、本業である建機とのシナジーも大きい。
キャタピラーは世界の軍隊に建機類(装甲化されたタイプも含む)を販売しているのみならず、軍用ディーゼル・エンジンのメジャー・プレーヤーである。装甲車輛用では装甲車輛やトラック用のディーゼル・エンジンは275~700馬力以上のエンジンを世界の軍隊に提供している。エンジンのみならず、エンジンとトランスミッションを組み合わせたパワーパックの販売も行っている。キャタピラーは1998年にエンジンサプライヤーだった英国のディーゼルエンジンメーカー、パーキンスを買収、子会社化している。同社は英内外の戦車1500馬力エンジンまでを含む装甲車輛やトラックにディーゼル・エンジンを供給している。
同社の買収が軍用エンジン・ビジネスでのキャタピラーのシェアを大きく押し上げたといって良いだろう。キャタピラーのエンジンは米軍のストライカー装甲車シリーズの他欧米、途上国などでも多く採用されている。更に同社は海軍や沿岸警備隊用にもディーゼル・エンジンを供給している。
ダイキンや三菱重工に売却すればいい
コマツは、キャタピラーのような事業展開を目指すつもりはないようである。であれば、防衛産業から撤退してその資源を本業につぎ込むべきだろう。例えば砲弾関連はダイキン、装甲車輛は三菱重工に売却するなどし、防衛関連は民間品である建機の転用程度に留めるべきだろう。
中途半端な特機部門の事業規模では早晩、研究開発も設備投資もできなくなる。事業規模を無視して、過大な研究開発や設備投資を行えば、株主の理解は得られないためだ。その結果、世界の一線に匹敵する製品を開発、生産することは、ますます困難になっていく。
性能面で劣り、価格が何倍もする製品を防衛省に納め続けることはコマツにとっても、その株主にとっても、また一般の納税者にとっても利益のあるところではない。また日本の防衛産業の常として、株主や社会に対して自社の防衛産業の実態を必要以上に隠すので、世論や株主が議論を行うベースとなる情報を提供していない。これは防衛省の顔色を覗ってのことだろうが、上場企業として公的責務の放棄ともいえるのではないか。
コマツを含め防衛産業の経営陣は防衛省の顔色だけを気にするが、防衛装備は税金で調達されている。つまり株主含めた納税者に対して説明責任があるわけだが、その意識が欠如している。
坂根正弘相談役をはじめ、近年のコマツトップの経営能力の高さには定評がある。だがその優れた経営者たちがこと防衛部門のことになると思考停止、情報を社会提供しようともせず、問題先送りを続けているのは極めて不可解だ。コマツだけでなく、防衛産業を抱える多くの日本企業に共通する宿痾といってもいい。この際、コマツは先んじて事業再編への行動をとるべきだろう。
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