コマツが防衛事業から撤退すべき5つの理由 取り組み姿勢が、キャタピラーとは対照的

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防衛省は来年度予算で陸自の96式装甲車の後継車輛の「装輪装甲車(改)の開発」(改良とあるが実際は新規開発)として、新型8輪装甲車の開発費を48億円計上している。コマツと三菱重工のいずれかが受注すると見られているが、三菱重工はすでに開発した機動戦闘車の派生型をこれに投入すると見られている。機動戦闘車の派生型ということでコストを低減できることをセールスポイントにするのだろう。

コマツも先の陸幕長である君塚栄治氏を顧問に迎えてプロジェト獲得を目指している。陸自には他に新規の装甲車輛のプログラムは無い。そのため、このプロジェクトを獲得できなければ、コマツの装甲車輛の売り上げは大きく減じるだろう。

いずれにしても、防衛省の調達規模では、装甲車輛メーカー2社を養える規模ではない。

コマツの広報は防衛装備関連の取材には応じない。そのため広報に対して確認をすることはできないが、関係者に取材する限り、同社は砲弾にしろ、装甲車にしろ、輸出するつもりはない。民間転用が容易な建機の類の輸出用軍用モデルの開発についても同じだ。

もう一つの大きな問題は本業の建機部門と、特機部門とのシナジー(相乗効果)が極めて小さいことだ。つまり特機部門で開発した技術やコンポーネントが本業の建機に寄与することも、建機の技術が特機部門に寄与することも少ない。

コマツにとって防衛部門は単なるお荷物、という扱いになっているのだろう。だが同社の経営陣は特機部門の売り上げ向上や採算性の向上、持続可能なビジネスモデルの構築などには無関心であった。長年これにテコ入れすることも、撤退、あるいは他社との事業統合なども行ってきていない。情報開示をしていないことが奏功しているのか、株主からのプレッシャーも少ないようだ。

今年から武器禁輸が緩和されたが、先述のように積極的な輸出をする気も無い。ただ、ひたすら防衛省の売り上げに頼っているだけだ。

特機部門は誇れない事業?

同社は多くの防衛(特機)部門を抱える企業と同様に世間体の悪い、誇れない事業のように扱ってきた。歴代社長が特機部門に要求してきたのはひたすら収賄などのスキャンダルを起してくれるな、ということばかりだった、と複数のコマツ関係者は証言する。だから輸出を志向しないのは、当然といえる。防衛省向けのビジネスはまだしも世論の理解を得られるにしても、輸出をしてしまえば、「死の商人」と指弾されるとの思いもあるのだろう。

そんなコマツとは対照的なのが米キャタピラーの防衛部門だ。

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