防衛予算は微減が続き、それに合わせて装備の高度化による調達単価の高騰、維持修理費の高騰などによって装備調達予算は毎年減り続けている。つまり防衛産業自体が衰退産業といえるだろう。
しかも2013年度に策定された防衛大綱では戦車、火砲(迫撃砲除く)の定数がそれ以前の大綱の400両/門から300両/門と25パーセントも減らされた。大綱の定数削減はその大綱終了時に達成されればいいとされており、現時点では戦車、火砲とも600~700両/門程度存在している。つまり現大綱が終了する平成35年度には実に戦車・火砲は現状の半分以下に削減されるのだ。
当然、コマツが受注する砲弾の数は激減することになる。生産数が減れば生産コストが高くなり、調達数が益々減るという悪循環に陥る。現在コマツでは単価の高い精密誘導砲弾を開発中だ。これはINS/ GPSで誘導し、終末誘導をレーザーで行うもの。諸外国ではすでに実用化されているが、一般に調達単価は通常弾の10倍以上もする。生産量は通常弾よりも少ない。これをわずか300門の火砲のために生産するならば諸外国の同等品に較べて、数倍はコストが高くなるだろう。輸出を前提に数量を確保しない限り、事業として成立させるのは極めて難しい。
国産装甲車輛単価は海外同等品の約3倍
日本の装甲車輛はコマツの生産している96式装甲車や軽装甲機動車も含めて調達単価はおおむね諸外国の同等品に較べて約3倍である。しかも防御力は96式や軽機動装甲車などはNATO規格であるSTANAG 4569のレベル1程度。諸外国ではレベル2~4程度が当たり前だ。特に地雷に極めて弱い。96式に至っては下部が凹型になっており触雷の被害を増大させてしまう。
近代化して装甲を強化しようにも、エンジンのパワーや車幅の問題もあり極めて難しい。更に道路外走行能力が低いなど性能的にも問題がある。とても諸外国に軍用装甲車として売れるレベルの製品とはいえない。
これはメーカーであるコマツだけの責任ではない。ガラパゴス化した陸幕の要求仕様によるところも大きい。いずれも陸自向けに開発した装甲車は輸出しようにも、買い手がいない。
そこに、さらに襲うのが、過去の棲み分けの崩壊だ。これまで、長年にわたって陸自の装甲車両は、装軌装甲車は三菱重工業と日立製作所、装輪装甲車はコマツという形での役割分担がなされてきた。ところが、現在開発中の105ミリ戦車砲を搭載した8輪装甲車、機動戦闘車は三菱重工とコマツが争った結果、三菱重工が契約を獲得した。
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