「妖怪大戦争」で具現化したKADOKAWAのIP戦略 映画だけでなくイベントや地域連携での活用も
2005年の「平成版」の『妖怪大戦争』は、KADOKAWAと大映が1つのコーポレーションとなった証しとして、大映のIPを活用する作品の先例となった。文芸・映像事業局 映像企画制作部の椿宜和部長は、「KADOKAWAが大映を引き継いだ象徴のような作品だった」と作品の成果を振り返る。
そして前作から16年の時を経て、令和の世にシリーズ最新作が復活することになる。そのきっかけは、KADOKAWAグループの角川歴彦会長の、『アベンジャーズ』にも負けないような「とてつもなくスケールの大きな映画を作りたい」という熱い思いだったという。
KADOKAWAといえば、出版と映画がしっかりとタッグを組み、ジャンルを超えた多角的な宣伝展開を行うことに特色がある。例えば鈴木光司の小説を映画化した『リング』に登場する「貞子」は、日本でも何度も映画化され、果てはハリウッドでも映画化されるほどの人気キャラクターとなった。そして次の多角化展開のコンテンツとして白羽の矢が立てられたのが「妖怪」だったのだ。
大魔神が復活
また、『妖怪大戦争 ガーディアンズ』では、妖怪たちが恐れ、人間界にも大きな災難を呼ぶ “妖怪獣”に立ち向かう存在として「大魔神」が55年ぶりに復活することも話題となっている。「大魔神」とは、1966年に大映が製作した特撮時代劇に登場する巨大な守護神。「大魔神」と「妖怪」というユニークなコラボが可能となるのも、KADOKAWAが誇る豊富なIPゆえだろう。
IPを地域連携のシンボルとして活用する動きも進める。中でも、本作の舞台でもあり、KADOKAWAの新拠点を設置した埼玉県の「所沢」がその中心地になっている。
所沢が、映画の舞台に選ばれたことには大きな理由がある。
緑豊かな武蔵野の台地には、太古からの妖怪伝説が言い伝えられてきた。日本列島を東北日本と西南日本で分断していた“フォッサマグナ(大地溝帯)”の境目が武蔵野台地のまさに所沢であり、フォッサマグナに眠る古代の化石たちが一つになってできあがった巨大な妖怪獣が、東京に向かうのをなんとか阻止するために妖怪たちが奮闘するというのが今回の映画の物語の骨子だ。
角川歴彦会長とともに製作総指揮を務めた小説家・博物学者にして、妖怪研究の第一人者である荒俣宏氏は、妖怪のみならず、考古学、地質学、歴史学などをベースに「武蔵野3万年の自然と文化と歴史」をテーマとしたスケールの大きな物語をつむぎ出した。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら