陸自隊員の銃装備が「お寒い限り」と断言できる訳 知見乏しく諸外国の動向に無関心で調達も不効率

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自衛隊の9ミリ拳銃(筆者撮影)

「9ミリ拳銃」の後継の新拳銃は昨年度、H&K社のSFP9の輸入調達に決定した。新型拳銃が輸入に切り替わったのは、調達単価がオリジナルの数倍もするということだけではなく、このようなメーカーの能力不足にも原因があったのだろう。

これによってミネベアミツミの自衛隊向け火器調達はなくなった。国産メーカーを優遇した結果がこれである。ミネベアの拳銃生産は、警察と海保向けだけとなるので事業規模が小さくなる。拳銃生産から撤退する可能性もあると筆者は予測している。

陸自が採用したH&K社の拳銃SFP9(筆者撮影)

小銃の先端に装着して発射する06式小銃擲弾も時代遅れと言わざるをえない。小銃擲弾は第2次世界大戦中に流行し、1950年代には廃れた代物だ。アメリカ軍含めて他国ではライフルの銃身の下に装着したり、単体でスタンドアローン型の40ミリ(ソ連系装備の国は30ミリ)のグレネードランチャーを使用したりするのが普通だ。

これらに比べて小銃擲弾は命中精度の低さや弾種が限られていること、連射ができないことなどの欠点は多い。21世紀になってもこのような骨董品をわざわざ開発、装備しているのは世界を見渡しても陸自ぐらいであろう。

自衛隊は国産兵器を開発する言い訳として「わが国独自の環境と運用」をうたい、他国に存在しないものを開発しようとする。が、40ミリランチャーにすると外国製と競合して価格、性能とも勝てない。実際に2020年に採用された20式小銃では、外国製の40ミリグレネードランチャーの採用も決まった。これは事実上、06式小銃擲弾は失敗だったという証左だろう。

諸外国が小銃をシステムとして調達しているのに比べ

豊和工業が開発した20式小銃。弾倉など一部コンポーネントは国産できず輸入品を採用(筆者撮影)

89式小銃の後継として採用された20式小銃にしても運用と調達構想が時代遅れだ。諸外国ではすでに小銃はグレネードランチャーや光学サイト、フラッシュライトなどのシステムとして調達している。だが陸自にはそれがなく、小銃単体での採用計画だけで、システムとして導入する運用構想や計画がないようだ。40ミリグレネードランチャーにしても具体的な調達計画は示されていない。

しかも20式小銃は現用の89式と同様に約30年かけて調達される予定だ。だが大抵諸外国では6~8年である。毎年少ない調達数だと調達単価は高くなる。事実89式の調達単価は諸外国の数倍、最大8倍程度であった。

20式小銃公開時に同時展示されたベレッタ社の40ミリグレネードランチャー。調達の詳細は決まっていない(筆者撮影)

そして調達期間の終盤に初期に調達したものが廃棄されることも多く、本来予定した調達数がそろう期間が極めて短い。つまり調達計画が最初からから破綻していることになる。しかも89式と長期にわたって併用されるのでその間の訓練や兵站は2重になって効率も悪い。

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