伝わらない文章を書く人は主語・述語に問題アリ ベテラン校閲記者が教える「わかりやすい文章」

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<このバッターは選球眼がいいので>

ここには「ので」という接続助詞が使われています。接続助詞は、文字通りその前後を繋ぐ働きがあります。つまり接続助詞を挟んで異なる要素が並んでいると言えるのです。図式で表すと

W+接続助詞+X+接続助詞+Y……

となります。接続助詞を使うと文はどんどん長くできます。その結果、主語が不明確になり、最後にまた主語を置かざるを得ない場合がでてきます。それが例1)なのです。

■接続助詞の前で文を切る

「ので」「で」「だが」「が」などの接続助詞があったら、その前後で異なる要素の文がつながっているのだと認識することが肝要です。そして、接続助詞の前後を分割して独立した文にするのです。

例1)このバッターは選球眼がいいので三振とフォアボールをよく選び、打率と本塁打が多いバッターだ。

この例で言えば、接続助詞「ので」の前にある「このバッターは選球眼がいい」というところで、句点「。」を入れて文を切るのです。

<このバッターは選球眼がいい。>

これが、例1)の骨に当たります。そこを分割できれば、「だから、三振が少なく、フォアボールが多い」「打率も高く、加えて本塁打も多い」などの肉をつけていけばいいのです。

なぜ文が短くできるのかを理解しよう

書店のビジネスコーナーに「文章の書き方」に類する本がたくさん置かれています。その多くは「文章は短いほうがわかりやすい」と指摘しています。文を短くするためのアプローチは、さまざまあることと思います。

『きっちり! 恥ずかしくない! 文章が書ける』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

ここでは、係助詞「は」の働きを理解し、できるだけ接続助詞を使わないようすれば、必然的に文は短くなる。

ということを中心にお話をしました。これは、一つの要素で一つの文を書くということでもあるのです。

極端に言うと、箇条書きでいいのです。文を書くと、どうしても要素が増えて長くなります。文が長くなると、主語と述語の関係に齟齬が生じやすくなります。「箇条書きでいい」と言ったのは、それを抑えるための意識付けとしてのアプローチなのです。

冒頭のTwitterにあった

「ご不便をおかけしますが、健康・感染を守るため……」

という文も、中黒(・)を使って並列させてことばを重ねたために、述語が合わなくなってしまったのです。文意を通すには接続助詞と同じように、ことばを分割することが必要だったのです。

前田安正さん(写真:AERA dot.)
前田安正(まえだ・やすまさ)/未來交創株式会社代表取締役/ビジョンクリエイター/文筆家。朝日新聞元校閲センター長/用語幹事。早稲田大学卒業、事業構想大学院大学修了。「漢字んな話」「漢話字典」「ことばのたまゆら」「あのとき」など、十数年にわたり朝日新聞に漢字や日本語に関するコラム・エッセイを毎週連載。2019年コミュニケーション・ファクトリー未來交創株式会社を立ち上げ、「文章の書き方・直し方」など、企業・自治体の広報文の研修に多数出講。テレビ・ラジオ・雑誌・ネットなどのメディアにも数多く登場している。メルマガ「前田安正のマジ文アカデミー」も配信している。未來交創HP。著書に、約10万部の『マジ文章書けないんだけど』(2017年・大和書房/19年・台湾で翻訳出版)を始め、『3行しか書けない人のための文章教室』(朝日新聞出版)、『きっちり!恥ずかしくない!文章が書ける』(朝日文庫)、『使える!用字用語辞典』(共著・三省堂)など多数
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