「発達障害の弁護士」が語る「無理解な職場」の実態 「治るまで出社しないで」と指示する上司も!
発達障害の弁護士のもとに、毎週火曜日、同じ生きづらさを抱える人たちが足を運んでいる。
ASD(自閉症スペクトラム症候群=発達障害の一種)と診断された伊藤克之弁護士は、同じ困難を抱える人の悩みを解決するため、2018年に発達障害の専門相談室を作った。
障害を原因とした「働く悩み」には、会社側に障害への理解が足りないケースも多い。しかし、当事者にトラブルの原因を見出すこともあるという。
伊藤弁護士が耳を傾けてきた「発達障害の労働問題」を聞いた。
「あなたは障害者に見えない」と言われてしまう
――発達障害の人からの労働相談にはどのようなものがありますか?
健常者の人と同じく、たとえば雇い止めや解雇についての相談があります。しかし、その原因のほとんどは、障害者雇用促進法にもとづいて企業に義務付けられている合理的配慮の提供が得られないことにあります。
適切な配慮を受けられないことで、ときには二次障害の抑うつ症状となり、休職に至る場合が目立ちます。復職しても、職場にいづらくなって、雇い止めや解雇につながるケースが少なくありません。
しかし、会社側に問題があるのか、相談者本人にも問題があるのか、よく聞いて判断する必要があります。
――会社側の問題とは?
障害への理解や知識が不十分である場合があります。
例えば、障害者雇用で入社した人が、「あなたは障害者に見えない」と言われてしまうことがあります。
発達障害が「見えない障害」であり、「調子の波」があることも理解してもらえないわけです。
発達障害は「特性」なので、病気のように治るものではありません。しかし、診断名のついた社員が「治るまで出社しないで」などと命じられるようなこともありました。