「発達障害の弁護士」が語る「無理解な職場」の実態 「治るまで出社しないで」と指示する上司も!

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なお、紛争解決のために労働組合を頼る発達障害者もいますが、組合にも理解が足りていないケースがまだあります。

気分が安定しないことから、支援を受けている際に、激しい言葉を使ってしまう発達障害の人もいます。そのような状況にもかかわらず、「あなたよりもっと苦労している人がいるんだよ」など配慮に欠ける言動をしてしまう組合関係者もいました。

理解を得られず苦労している人の力になりたい

――発達障害と診断された経緯は?

法律事務所で5年働くなか、過労とプライベートの悩みから抑うつ状態となり休業しました。復職はできましたが、心療内科に通ってもよくならず、主治医からすすめられて受けた検査で2016年にASD(広範性発達障害)と診断されました。

私には「こだわりが強い」「コミュニケーションが苦手」などの障害特性があります。それがわかって自分を悩ませていたものの正体がわかり、視界がパッとひらいた気がしました。

――発達障害は弁護士業務にどのように影響するのか?

表情から相手の気持ちを汲み取りにくいため、依頼者の打ち合わせは多少やりにくさがあります。

ただ、「過集中」という特性もあり、文章を書くうえでは大きなプラスになります。

カミングアウトすれば、仕事の一部を失うかもしれないと思って、迷いもありました。しかし、結果は心配したほどではありません。

おそらく、発達障害当事者の弁護士は私だけではないでしょう。自覚していない弁護士も多いのではないかと思います。

発達障害の問題解決のため、チームを組んでいけば、もっとやりやすくなることでしょう。

発達障害に関する労働分野でのトラブルは増加していると感じていますが、弁護士までたどりつけないのが実情のようです。

目に見えない障害のため、理解を得られずに苦労されている人の力になりたいと思っています。法的トラブルに関して、司法との通訳になるという役割を務めたいです。

また、発達障害には得意なものと苦手なものの凹凸があるものです。ですから、企業には、欠点だけを見るのではなく、優秀な特性を伸ばして活用してほしいと考えています。それは必ず、企業への社会的評価にも結びつくはずです。

(弁護士ドットコムニュース編集部・塚田賢慎)

■取材協力弁護士
伊藤 克之(いとう・かつゆき)弁護士
発達障害の特性を持つ弁護士として同じ障害、同じ生きづらさに苦しむ当事者の力になるべく奮闘中。一方で、発達障害のパートナーや家族等の対応に悩まされて「カサンドラ症候群」になった人のサポートにも注力している。
事務所名:日野アビリティ法律事務所
事務所URL:https://www.hino-ability.com/

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