タリバンが「女性蔑視思想」を築いた3つの背景

イスラム法からタリバンの思想を読み解く

猛烈な勢いで、アフガニスタンで権力を掌握したタリバンに対して、多くの女性が教育や働くことの権利などが侵害されないか懸念を抱いている(写真:Victor Blue/The New York Times)

アフガニスタンで実権を掌握したイスラム主義組織タリバンは8月17日、「イスラム法(シャリーア)の範囲内で、女性の権利を尊重する」(報道担当の幹部)と述べ、国際社会の懸念に応える形で女性の権利を尊重する方針を示した。ところが、早くも女性の権利侵害やジャーナリストらへの蛮行が伝えられ、不信感が渦巻いている。タリバンが表向きに示す穏健姿勢は、「イスラム教やイスラム法の枠内」という条件付き。ここに大きな落とし穴がありそうだ。

イスラム法では、宗教から日常生活の規範、結婚、犯罪行為、国家の機能まで信徒が従うべき道筋が定められているが、法学者の解釈に依存しており、宗派や時代、国や地域によって大きく変化する。その柔軟性によって現代社会に対応できる面を持ち合わせているが、タリバンのような保守的な勢力は、預言者ムハンマドが生きていた7世紀頃のイスラム社会が理想という復古主義的な主張が目立つ。

イスラム法を極端に解釈して女性の権利など現代社会の価値観とはそぐわない言動を取りがちだ。イスラム法の考え方を理解することは、タリバンの台頭など混迷するイスラム世界を読み解く助けになるだろう。

解釈次第で揺れ動くシャリーア

シャリーアは、もともとの意味は「水場に至る道」で、アッラー(神)が示した正しい生き方を定めたイスラム法を指す。礼拝方法や食事規定などは定まった解釈があるものの、宗派や法学者によって大きく解釈が異なる事象も多い。コーラン(イスラム教聖典)などの法源には、法的に文章化されたものは存在しない。「不文法」であるシャリーアは、法学者が法源との整合性を見たり、時代、社会の状況などに合うかどうかを解釈したりして法規定を導き出したものである。このため、タリバンが主張する「シャリーアの枠内」というのは、具体的に何も語らなかったのに等しい。

シャリーアに依存しているのは、タリバンや国際テロ組織アルカイダのような過激な武装組織だけではなく、シャリーアを憲法の法源にしているイスラム諸国も多く、一般の市民も大なり小なり、シャリーアに生活の規範を求めている。ただ、国家の法体系に、どの程度具体的にシャリーアを取り入れるかどうかは、世俗派や他宗教の懸念が強いことから、激しい論争を招く場合が多い。

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