強烈にたくましい「8つの植物」のすごい生き様 「逆境? なにそれ?」という柔軟さ

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⑥ オオバコは人に踏まれるとむしろうれしい

オオバコは、オオバコ科の多年草で、日本では高地から平地までの野原や道ばたなどに自生する、いわゆる雑草の仲間です。雑草の中でもとくに踏みつけに強いのが特徴です。葉は柔らかいのですが、筋はしっかりしていて、踏まれてもなかなかちぎれません。茎は外側が固く、中がスポンジ状で、しなやかでじょうぶです。オオバコと一緒にほかの雑草が生えていた場合、踏まれてもオオバコだけは生き残ります。

種には水に濡れるとネバネバする性質があり、くつや自動車のタイヤにくっついて運ばれます。オオバコにとって踏まれることは逆境ではなく、むしろありがたいことなのです。

(画像:『ほんとうはびっくりな植物図鑑』より)

⑦マツは乾燥しても平気で繁殖する

マツは、マツ科マツ属に属する樹木の総称で、日本ではアカマツやクロマツが有名です。

マツの種は、め花の裏にできます。め花は中心軸に対してらせん状に並び、全体としては卵形になり、マツカサと呼ばれます。

マツが種をばらまく手段は、種類によってさまざまです。アカマツやクロマツは、マツカサが地面に落ちる間に風に乗って種が散らばります。マツカサは水につけるとカサが閉じ、乾燥すると開く性質があります。

カナダやアメリカ・ミネソタ州、メイン州などには、山火事が起きて空気が高温になって乾燥するとカサが開き、種を地面にまき散らすバンクスマツが生えています。

(画像:『ほんとうはびっくりな植物図鑑』より)

コンクリートを突き破るイタドリの生命力

⑧イタドリをナメていたイギリスは天敵を輸入するハメになった

『ほんとうはびっくりな植物図鑑』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

イタドリは、タデ科の多年草で、山野や土手などいたるところに群生しています。日本では山菜として親しまれ、若い茎をきんぴらにしたり、新芽は生でも食べられたりしています。東アジア原産ですが、19世紀ごろに観賞用として欧米にもちこまれました。

イタドリは、地下茎をのばして繁殖しますが、地下茎をのばした先から地表へ出てくる際に、コンクリートやアスファルトを突き破ってしまいます。とくにイギリスでは天敵がいなかったので爆発的に広がり、大きな被害をもたらしました。日本には天敵のイタドリマダラキジラミがいるので、そこまで広がっていないのです。

(画像:『ほんとうはびっくりな植物図鑑』より)
稲垣 栄洋 静岡大学農学部教授

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いながき ひでひろ / Hidehiro Inagaki

1968年静岡市生まれ。岡山大学大学院修了。専門は雑草生態学。農学博士。自称、みちくさ研究家。農林水産省、静岡県農林技術研究所などを経て、現在、静岡大学大学院教授。『身近な雑草の愉快な生きかた』(ちくま文庫)、『都会の雑草、発見と楽しみ方』 (朝日新書)、『雑草に学ぶ「ルデラル」な生き方』(亜紀書房)など著書50冊以上。

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