超多忙なスケジュールの合間を縫ってインタビューに応えてくれた投資会社の経営メンバーであるAmeliaさん(仮名)。彼女は、「子どもが落第したら母親の責任になる」「シンガポールの女性は大変。妻で、母で、働き手で、美しくもないといけない」とため息交じりに早口で語った。具体的には誰にそういうことを求められるのかと聞くと「あらゆるところから。教師も、友達も、親戚も、SNSでも」と言う。
別の外資系金融機関に勤める女性も「私の場合は両親が17~18時は助けてくれてるし、ヘルパーもいるし、夫はフレキシブルな働き方をしていて在宅勤務もできる。そして、私のほうが夫よりも稼いでいる。それでも子どもの教育は母親というかんじはある。成績が悪いとき先生は母親と話したがる」と話す。
少し古いが、1999年の政府レポート「Study on the Singapore Family」で、シンガポールのアンケート対象者たちは「女性にとってキャリアや仕事をもつことは男性と同じように重要である」に74.0%、「妻の収入は夫の収入と同じくらい重要である」にも78.7%が賛同している。
ところが、家庭の役割について「夫が助けたとしても、家庭の責任は妻のものである」に77.8%、「問題が起こったとき、働く女性の最優先される責任は夫と子どもに対するものである」に90.6%、「妻は夫が許可しない場合働くべきではない」に64.2%が強く賛同または賛同している。それはつまり女性は経済的な役割も、家庭での役割も、両方やってくれということにほかならない。
2つ目:女性に偏る「社会関係資本」
もう1つ、教育責任が母親に偏る理由として私が感じたのは、女性の「ママ友同士の口コミ」が子どもの教育のためにも重要であり、そこに父親がなかなか入りこめていないということだ。
連載でこれまで見てきたように、よりよい家庭教師を探すといったことに社会関係資本、すなわち人脈やネットワークがとても重要な役割を果たしている。比較的育児に献身的な父親たちにインタビューをしても、習い事や家庭教師、塾をどうやって見つけたかを聞くと「妻が口コミで聞いてきた」「義理の姉のおすすめのままにしたから、詳しく知りたければ彼女に聞いて」となる。そこはよくも悪くも女性たちの世界なのだ。
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