「持っているもの貸すだけ」の複業が人気を得た訳 価値がないと思っていたこともビジネスになる

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「減るものではないから」と、友人限定のSNSで告知したところ、依頼がきたため、実際にサービスを始めることにしました。その友人は、「自然の中で、ただただ料理がしてみたかった」とのこと。だけど、どこで場所を借りられるのか見つけられなくてあきらめていたそうなのです。

僕にしてみたら、ただ自宅の空いている土地と私物を提供しただけです。でも、都心に住むその友人のような人にとっては、それが価値だったのです。「自分にとっては当たり前のことでも、そこに目を向けて発信すると、価値だと思ってくれる人が集まり、仕事になっていく」。需要と供給というビジネスの基本的な考えですが、複業をしていなければ、この当たり前に気づくことはなかったでしょう。

ちなみに、貸し出し料金は1日利用で1人1000円(税込)。最低限に抑えていて、経費を考えれば儲けはないに等しいです。でもその代わり、この場所で何かのイベントが開催されるたびに、僕はお金には代えがたい貴重な「経験」と「つながり」という報酬をいただいています。

昨年末も、オリンピアンの勅使川原(てしがわら)郁恵さんが代表理事を務める「ナチュラルボディバランス協会」の「なちゅぼ式プログラム」のアクティビティに、会場とグッズと畑を提供。笑顔いっぱいで人参を収穫する子どもたちを撮影していて(ムービー撮影も担当)、元気をたくさんもらい、むしろこちらがお金を払いたいほどでした。

発信すると、誰かの「価値」になる

僕はこのように、好奇心の赴くままに関心事を追求し、もともとの経験や持っていたものと掛け合わせることで、それを「複業」に変えていきました。

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いずれも、自分なら簡単にできること、やってきたこと、知っていることを整理して、SNSなどで発信した結果、生まれたものばかりです。無理して探したことはありません。いずれも周りが「それって価値だよね」と気づかせてくれたのです。

とはいえ、自分が何を持っているのかすらわからない人もいるでしょう。そんな人にお勧めしたいのは、以下の問いを自分に投げかけてみることです。

•自分が何に時間を使っているか?
 •なぜ、自分はそれを続けられるのか?
 •自分がそれを続けられる環境は、誰もが手にしている環境か?
 •その環境を求めている人はいるか?

最後の「その環境を求めている人はいるか?」は、自分で考えてもわからない可能性が高いため、SNSなどで発信してみるといいと思います。

中村 龍太 複業家

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なかむらりゅうた / Ryuta Nakamura

1964年、広島県生まれ。日本大学卒業後、1986年に日本電気(NEC)入社。1997年、マイクロソフトに転職し、いくつもの新規事業の立ち上げに従事。2013年、サイボウズとダンクソフトに同時に転職、複業を開始。さらに、2015年にはNKアグリの提携社員として就農。現在は、コラボワークス、サイボウズ、自営農家のポートフォリオワーカー。2016年、「働き方改革に関する総理と現場との意見交換会」で副業の実態を説明。一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会で、パラレルキャリア推進プロジェクトのリーダーを務めるなど、複業のエバンジェリストとしても活躍中。

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