上から目線で「ワイン語る人」が知らない楽しみ方 ワインを楽しむのに知識から入る必要はない
ただ、言うまでもないことだが、やはり簡単にわかることは、簡単なことだけである。複雑な多様性は5分ではわからない。「ワイン」を「人生」に置き換えてみれば明白だ。『5分でわかる人生』『100冊読めば幸せな生き方がわかる』という本があれば、人はそれを信じるだろうか。
ただまったく心配する必要はない。ワインを楽しむのにワインを「わかる」必要はない。幸せになるのに人生を「わかる」必要がないのと同じである。
幸せな人生を送りたいと思って、まず「人生とは何か」を学ぶために哲学書を開ける人は少ないだろう。人生を楽しむには、とりあえず「街に出て」実人生を生きることである。ワインも同じだ。「わかろう」とするよりも自分が気に入りそうなワインをとりあえず飲んでみることだ。人生と同じで失敗もあるだろう。それこそが次に失敗しない「勘」を養ってくれる。
いきなり高いワインから始める必要はない
単に美味しいワインを楽しみたいというのであれば、いきなり高いワインから始めるのは賢明ではないだろう。ワインの味わいは本当に多様なので、とりあえず低価格のワインを試してみて、自分の好みに合ったものをいくつか選んでみることが重要だ。ワインはあくまで嗜好品であり、ガイドブックや雑誌で評価が高くても、自分の好みに合うとはかぎらない。
だから自分が美味しいと思えるワインに出会ったら、それに似たものをいくつも試してみることだ。ブルゴーニュのワインが気に入れば、しばらくはほかの産地に目もくれず、ブルゴーニュだけを飲めばいいだろう。ボルドーがいいと思えば、しばらくはボルドーだけを飲めばいい。
そしてもう少し上のクラスを試してみたいと思ったら、少し価格帯を上げてみればいいのだ。価格帯を上げても、それに相応しい値打ちが見出せなければ元の価格帯に戻るべきだ。今はその価格帯があなたの心に響くワインなのだから。
同じタイプのワインを飲み続けていると自分の中に味覚の基軸ができあがってくる。そうするとそれが試金石になってくれるので、他の産地のワインを飲んだ時にも特徴が捉えやすくなるのだ。
これはレストランでも同じことだろう。自分が気に入った鮨屋ができたら、しばらくはそこに通い続けることだ。そうすれば鮨とはこういうものという自分なりの基準ができる。他の鮨屋に行っても違いがすぐわかり、それぞれの店の特徴を捉えたり、位置づけをしやすくなるのだ。
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